三田評論ONLINE

【その他】
【KEIO Report】 協生環境推進室「女性のからだ支援~Breezeプロジェクト」について

2022/03/08

  • 黒田 絵里香(くろだ えりか)

    協生環境推進室事務長

  • 中峯 秀之(なかみね ひでゆき)

    協生環境推進室事務長代理

2020年からはじまった新型コロナウイルス感染症の拡大は慶應義塾も決して無縁ではなく、塾生の経済状況にも大きな影響を及ぼしている。このことに対応するために、各種奨学金の他、家族の経済的困窮や親元を離れて生活する塾生への生活不安を少しでも和らげるために「塾生の生活を守るための『食の支援』」と題してキャンパス内で使用できる「食券」の配布などの取り組みも行っている。

一方で、経済的な理由で生理用品を購入できない女性に関する、いわゆる「生理の貧困」の問題が内閣府男女共同参画局で取り上げられており、慶應義塾でも「食の支援」に並行して2021年7月に生理用品の無償配付を6つのキャンパス全てで行っている。この取り組み自体は他大学等でも実施されているものでもあり、生理用品の配付はその流れに沿ったものでもあったが、Webによる申し込み受付から半日を待たずして用意していた500セットの配付件数に達してしまうなど予想を遥かに上回る大きな反響があった。その際に実施した塾生アンケートの結果によると、生活に困窮する塾生からの切実な状況を記した内容に加え、生理用品購入のために女性にだけ長きに渡る出費が必要とされることへの問題提起や、女性のからだに特有のさまざまな悩み、社会への疑問などが生々しく綴られていた。

慶應義塾では、「教職員・学生・生徒・児童が、互いの人格を尊重し多様な価値観を認め協力して生きるための環境を構築し、多様性の受容に関する課題に迅速に対処する」という目的を遂行するために2018年4月に協生環境推進室を設置している。今回の生理用品の無償配付の取り組みは同室が実施したものであるが、上記アンケートの結果は、その取り組みが一度きりのイベントのような対応ではなく、女子学生が大学生活を送っていく中で、自らの「からだ」へのさまざまな不安や問題を解決するための継続した支援の仕組みが必要であることも示唆していた。

その状況を踏まえ、「女性のからだ支援~ Breeze プロジェクト」の取り組みがここに誕生した。つまり、単発での企画の実施ではなく、「女性のからだ支援」というものをトータルに見据えてその問題解決に取り組もうとする姿勢である。この取り組みは、次のような5つの活動を主な柱としている。

「Breeze プロジェクト」の5つの活動

OiTrの導入:全国のショッピングモール・オフィス・学校・公共施設を対象に、施設内の個室トイレに生理用ナプキンを常備し無料で提供するOiTr(オイテル)というサービスがオイテル株式会社により始まっており、慶應義塾でも2021年12月に設置を開始した。2022年1月現在、6つのキャンパス全てに合計71台を設置し、利用を開始している。また、増設に向けた準備も進めている。

OiTrが設置されたトイレ

②生理用品の無償配付:2021年7月に、生活不安を抱える女子学生に対して生理用品の無償配付を行う取り組みを行い、継続実施している。年間に複数回に分けて募集を行い、希望者に配付を行っている。(2021年度実績:3回、7月・10月・1月)

③「女性のからだ・男性のからだ相談室」の設置:「自分のからだとの付き合い方」に焦点を当て、「女性のからだ」、「男性のからだ」それぞれ特有の悩み事や疑問等を相談する窓口を保健管理センターに設置した。産婦人科・乳腺外科・泌尿器科の専門医が相談に応じている。

④「女性のからだ支援」講演会・座談会の開催:「自分のからだとの付き合い方」などをテーマに専門医による講演会を開催している。またそれに合わせて、塾生・教職員が専門医を囲む形での座談会を実施している。また、当日出席できなかった方に向けて動画アーカイブを公開している。(2021年度実績:10月26日開催「自分のからだとの付き合い方」、1月26日開催「女性のからだとホルモンの関係」)

⑤「女性のからだ支援」アンケートの実施:当プロジェクト誕生のきっかけが塾生に向けたアンケートの内容であったことを重視し、今後も定期的に塾生を対象にしたアンケートを継続的に実施し、その結果をプロジェクトの活動に反映させていきたいと考えている。

なお、これらの活動内容を分かりやすく広報するとともに、プロジェクトの存在を幅広く周知するために、協生環境推進室Webサイト内に専用サイトを開設した。

◆協生環境推進室「女性のからだ支援~Breezeプロジェクト」Webサイト

協生環境推進室では、このプロジェクトの継続により、塾生および教職員の「からだのメンテナンス支援を通じたウェルネスの促進」を、多角的かつ積極的に進めていきたいと考えている。また、「協生環境推進憲章」の精神に則り、塾内の協生環境の更なる充実に向けてさまざまな活動を継続して実施していきたいと考えている。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

  • 1
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事