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【その他】
【社中交歓】サボテン

2022/03/14

さぼてんの言霊

  • 福田 隆憲(ふくだ たかのり)

    株式会社グリーンハウス グループ執行役員広報室長・1987経

食するサボテン! メキシコのノパルなどの食用サボテンではなく、とんかつのブランドのこと。世界中の人々が知る、可愛い花をつけ、多少水がなくても生きられるたくましい生命力を持つ植物のサボテンにあやかり、末永く人々に愛され、親しまれる存在でありたいとの思いがその名の由来である。

1996年12月、外食産業の黎明期の少し前に、新宿副都心開発構想の中でレストラン1号店が産声を上げて以来55年、「さぼてん」は、今では海外約100店でも愛される日本の味になり、「老舗」と言われることも増えた。この間、経済や社会の変化や浮沈も経験し、令和の時代も変わらず毎日お客様が来店する「さぼてん」は、今を生きる自分から見ればその名の通り、の存在だ。偶然か、必然か、現在、さぼてんの“かつ”に使用する豚肉の一部はメキシコで特別に生産・加工されている。

「言うことそのままが即ち実現する」ことが言霊観の1つなら、さぼてんはこれからも愛される花を咲かせるはず。そう願いながら今日も試食!

春日井サボテン

  • 松村 亜矢子(まつむら あやこ)

    中部大学生命健康科学部准教授、春日井広報大使・2019KMD博

愛知県春日井市の名産である春日井サボテン。観賞用の実生サボテンの生産は昭和28年から始まり、70年近い歴史がある。また、20年程前から、春日井ではサボテンが「食され」、1つの文化となっている。サボテンは栄養価が高く、多様な食材との相性も良いことから、市内ではお菓子やパン、ラーメン、餃子、パスタなど30を超える商品が販売され、学校給食でも食されている。また、シャンプーにも使用されるなど、その用途は多彩である。食用の「ウチワサボテン」には、ダイエットや整腸、がん・高コレステロール症・動脈硬化症の予防、抗アレルギー作用、疲労回復・精神安定など多種多様な働きも期待できることが研究されており、健康の維持・増進やSDGsの観点から世界的に「食べるサボテン」が注目されつつある。これを機に、全国展開、世界展開を視野にサボテンキャラクターの、春代・日丸・井之介トリオと共にPRを進めている。是非、皆さんも「食べる」、「使う」、「健康」の春日井サボテンをご賞味、ご使用ください。

枯れたサボテン

  • 冨塚 亮平(とみづか りょうへい)

    慶應義塾大学文学部非常勤講師・2009文、2021文博

ジョン・ランディス『サボテン・ブラザーズ』(1986)は、メキシコを舞台とした西部劇コメディ映画だ。村の娘が、教会で偶然見た映画に現れた3人組スリー・アミーゴスを本物の正義の味方と勘違いし、彼らに村を襲う悪党の退治を依頼する。映画撮影が行われると誤解した彼らが村を訪れると、そこに悪党たちがやって来て……。

3人組の身振りを生かしたギャグは、今見てもそれなりに面白い。だが、メキシコ人の知能の低さを前提としたギャグを今笑うことは難しい。たとえば、米国でのヒスパニック系の人口と影響力の増加を反映した、『リメンバー・ミー』(2017)のようなメキシコ文化により敬意を払った近作と比べると、本作でメキシコに向けられる視線の古臭さは否定しようがない。サボテンは枯れてしまった。

とはいえ、無論ランディスの感覚が全て時代遅れになったわけではない。『アニマル・ハウス』(1978)や『ブルース・ブラザーズ』(1980)の破壊的な笑いは、今後も語り継がれるはずだ。

サボテンは美味しい!

  • 本谷 裕子(ほんや ゆうこ)

    慶應義塾大学法学部教授

メキシコのスーパーや屋外市場には、草履のような形をしたサボテン(現地ではノパルと言われる)が食材として売られている。メキシコの人々はこのサボテンを使った料理が大好きである。だが、調理の前には必ず毛抜きやピーラーで棘を抜かねばならない。美味しくかつ安全にノパルを食するには、このひと手間が極めて重要となる。

ノパルは、牛肉や鶏肉などと炒めてトルティージャ(メキシコの主食:トウモロコシのクレープ)に巻いて食べるのが一般的だが、玉ねぎやオアハカチーズ(割けるチーズ、溶けたものが美味)とともにオムレツにしたり、刻んで湯通ししたものに玉ねぎとカッテージチーズを加えライムを搾ってサラダにしたり、濃厚なスープの具材にしたりと、調理法と合わせる食材次第で愉しみ方が無限に広がる。ノパルは納豆のような強い粘り気と茎わかめのような食感、かすかな酸味が癖になる。サボテン料理に出会ったら、ぜひその味を試してみてほしい。VIVA MEXICO(メキシコ万歳)、サボテンは美味しい!

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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