【その他】
【社中交歓】エベレスト
2021/05/01
エベレスト山
私は立川高校、そして義塾の山岳部育ちで、三越に入社後日本山岳会や義塾の創立100周年記念のヒマラヤ遠征隊に参加し未踏峰だったヒマルチュリ峰(7864m)にも初登頂しました。
その後三越で会社員生活を続けていたある日、山岳部の1年先輩で後に日本山岳会会長も務められた宮下秀樹さんから「おい! ナベ、エベレストへ一緒に行ってくれ」という電話が入りました。当時未踏であったエベレスト南西壁にオールジャパンで挑む日本山岳会の偵察隊を宮下さんが率いられることになり、私に来いということでした。
色々ないきさつがありましたが「世界一のものに挑戦できるのは俺には山登りしか無い」と思い、挑戦を決心しました。しかし残念ながら私の体は既にヒマラヤの高度に耐えることは出来ず6000mを限界にシェルパの肩にすがって山を下りました。
それ以降波乱に富んだ実業生活を送る一方、ヒマラヤは幾度も私を誘い、私もそれに応えてスケッチブックを片手にヒマラヤを訪れました。
高山病について
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楢林 朋子(ならばやし ともこ)
ならばやし内科・呼吸器内科クリニック院長・1993法
高地では、気圧の低下により大気中の酸素分圧の低下が起き、エベレスト山頂で平地の3分の1になる。SPO2(動脈血酸素飽和度)は60台後半―70台にとなる。通常はこのような低酸素状態では倒れてしまうところを、心拍出量・血色素・呼吸数の増加により、高所に適応する反応が起こる。徐々に高度を上げていくことが必要である。エベレストほどの高地であれば、ほぼ全ての人に高山病の症状が出現する。8000m程度の高度が、人間が呼吸できる限界なのであろう。
だから、エベレストの登頂は、生理的限界への挑戦であり、命がけである。50代以上は特に高所への適応が難しく、動脈血酸素飽和度も低くなる。また、高所への適応で血色素が上昇すると、血栓ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが上昇する。中高年以上でのエベレスト登頂は非常に高リスクである。
中高年の登山者は全体の75%を占める。高山病を予防するには、高度を徐々にあげ、適切な水分摂取をし、症状が辛い場合は引き返す勇気が必要である。
登頂に成功しました
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千葉 雄司(ちば ゆうじ)
慶應義塾幼稚舎教諭、NPO法人日本子どもと伝承遊び学会理事
エベレストへの登頂は、何度も成功しています。
この言葉だけ聞くと嘘だと思われますが、それは実際に登ったわけではなく、けん玉の技の一つに「エベレスト」という技があり、競技けん玉の最高峰である全日本けん玉道選手権大会で成功させました。けん玉の競技種目としては、最高難易度の技です。
この技は、けん玉のけん先の部分を持ち、最初に小皿のふちの部分に玉を乗せてから、エベレストの頂上に見立てた中皿に玉を移動させ、最後に大皿のふちの部分に玉を乗せることができれば成功です。
持ち方を反対にした「うぐいすの谷渡り」という技もあり、けん玉道五段の規定種目となっています。
エベレストはけん玉の世界でも憧れの技であり、1合目から神経を集中することで登頂への道が開けます。最後に技が決まったときの達成感と充実感はけん玉であっても味わうことができるのです。
最近は、NHK紅白歌合戦のステージで一緒にけん玉ギネス記録を達成した演歌歌手の三山ひろし君とエベレストに登頂できるように練習しています。
高地牧畜民の暮らしとヤク
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宮本 万里(みやもと まり)
慶應義塾大学商学部准教授
ヤクは標高3000メートル以上の高地に生きるウシ科の大型動物だ。その多くがチベット高原からヒマラヤ高地にわたる地域で飼育される。雌ヤクの乳がチーズやバターを生み出す一方、雄ヤクの多くは生後数年で屠られ、肉は米や麦を得るための交換財となった。長く丈夫な体毛は毛布や衣類に使われる他、牧畜民の暮らしに不可欠な移動用テントや縄を生み出してくれる。白色の尾は特に珍重され、儀礼具や装飾品として高値で売れた。高地牧畜民にとってヤクは全てを与えてくれる宝なのだ。
ヤクは荷運びにも適しており、明治期に単身チベットを旅した河口慧海(かわぐちえかい)もヤクに荷を乗せ、その背に乗り、険しい頂や冷たい川を越え、厳冬のチベットを生き延びた。ヒマラヤ地域の牧畜民は季節の変わり目にはヤクを美しく飾り、大切な住居であるテントを積んで移動する。その動きは緩慢だが力強く、朝霧の中重い荷を背負い悠々と進む姿は荘厳ですらある。牧畜民が行う山の神々への供儀には、ヤクの健康と繁栄への祈りが込められている。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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田辺 寿(たなべ ひさし)