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人を育てる、義塾を支える──福澤・小泉基金の拡大に向けて

2018/04/01

  • 髙橋 郁夫(たかはし いくお)

    慶應義塾常任理事

慶應義塾には、教育・研究・医療を財政の面から支える44の基金があります。基金とは、慶應義塾の発展に欠かせない各種事業を行うために学校法人として継続的に保持している資金を指します。この資金を運用することによって得た果実(運用益)により、例えば、慶應義塾の維持を目的として設置され、塾生への奨学事業を主な事業とする「慶應義塾維持会基金」をはじめ、教育・研究・医療などにおける特色ある多様な事業が継続的に展開されています。このように、基金は、それ自体を取り崩すことなく、積み増していくための不断の努力を重ねることを通じて、教育・研究・医療の諸事業の一層の充実に永く貢献してきました。

21世紀の急速に進展するグローバルな時代において、慶應義塾が持続的な発展を続けるためには、歴史と伝統を守る一方で、時代に即応した世界標準レベルでの教育研究のあり方を模索することによって、国際社会における情報発信力を一層強化することが求められます。

慶應義塾は早くから学事振興を目的として教育研究奨学金制度などの充実に力を入れてきました。特に「福澤諭吉記念慶應義塾学事振興基金」(以下「福澤基金」)及び「小泉信三記念慶應義塾学事振興基金」(以下「小泉基金」)は、義塾の学事振興と人材の育成のための様々な事業を行っています。

ここで、慶應義塾の研究資金のうち、補助金や助成金などのいわゆる外部資金と呼ばれる研究資金は、年間202億円(2016年度)ほどとなっています。これに対し、大学の自己資金は、年間約6億5000万円と総額こそ国内の大学としては高い水準にあるものの、研究資金全体に占める割合は、4%に満たない水準です。この自己資金比率は国内の主要大学と比べてもかなり低い現状にあります。

海外では、例えばハーバード大学は、およそ3兆円を超える基金を有し、その運用益によってきわめて質の高い教育研究が実践されています。これに対し、慶應義塾における基金の総残高は、わずか662億円と、教育研究のために拠出される1人当たりの助成額に圧倒的な差がついており、このような状況では、教育研究上の目標達成は非常に困難な状況にあると言わざるを得ません。

一般的に、競争的外部資金は使途が限られ、期間も短いため、長期的な思考の熟成を要する創造的研究にはあまり向いておりません。とりわけ、将来を担う若手研究者や大学院生の育成と彼らの自由な研究への取り組みのためには、その基盤となる自己資金の充実に基づく資金的援助が不可欠です。

また、今般、文部科学省の「スーパーグローバル大学」トップ型に選定されたこともあり、教職員のみならず塾生並びに一貫教育校の生徒の国際交流が一層盛んになってきましたが、その活動のさらなる充実と助成期間終了後の財源確保という問題も抱えております。

以上のような現状を踏まえると、競争的な資金以外に、慶應義塾独自の基金をより一層充実させることが急務となっています。具体的には、長期的な視点に立ち、教育研究活動を安定的に支えるインフラなどの整備と、諸活動への支援を行い、さらに質の高い教育研究を実現したいと考えております。長谷山彰塾長は、義塾創立200年までに基金残高を1000億円に増額したいとの目標を示しています。その一翼を担うべく、まずは「福澤基金」及び「小泉基金」の基金の残高を当面の目標として、現在の合計32億円から60億円にまで拡大し、両基金による各種活動を一層充実させたいと考えます。

今後はシンポジウムなどを開催するなど、基金の存在をより多くの方々に知っていただくため、各方面における情報発信に努めたいと考えております。これらの事業活動を実現していくためには、社中の皆様、保護者並びに広く社会一般の皆様からの温かいご支援ご協力が、ぜひとも必要となります。今後の慶應義塾の発展のためにご支援ご協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

○福澤基金

創立100年を迎えた直後の昭和36年、義塾は戦災を受けた施設の復興の途上にあり、施設の充実は喫緊の課題でしたが、高村象平塾長(当時)在任中、「学事の振興、学者の育成は義塾100年の計である」ことを優先し、主に寄付金によって研究の振興、研究者の育成を目的として設置されました。

事業は塾長及び塾長が委嘱する委員で構成される運営委員会により運営されています。現在の基金残高は、およそ18億円に上り、教職員の国外派遣留学、研究費の給付、学術出版、論文掲載料補助などの事業が行われています。

○小泉基金

1966年に逝去した元慶應義塾長の小泉信三の遺徳と功績を顕彰し、その名を永く後世に伝えることを目的に寄付金によって設置されました。

本基金は、塾長及び塾長委嘱の委員で構成される運営委員会により運営されています。塾生に対する学問及び体育の奨励、一貫教育校の教員・生徒・児童のための学事振興、小泉信三賞全国高校生小論文コンテストなどが実施されています。また、学術の国際交流を促進するため、国外出張費補助、外国人学者招聘費補助事業などが行われています。現在の基金の総額はおよそ14億円となっています。

〈ご寄付の方法〉
【個人でお申し込みを頂く場合】
◎一口1万円(できましたら三口以上)のご協力を賜りますようお願い申し上げます。 銀行・郵便局(ゆうちょ銀行) 慶應義塾所定の「払込用紙(兼申込書)」をお使いのうえ、最寄りの金融機関(銀行または郵便局)窓口からお振り込みください。詳しくは基金室にお問い合わせください。

インターネット募金 慶應義塾基金室ウェブサイト(http://www.kikin.keio.ac.jp/)からお申し込みください。


【法人・団体でお申し込みを頂く場合】
◎一口10万円(できましたら三口以上)のご協力を賜りますようお願い申し上げます。

〈問い合わせ先〉 慶應義塾 基金室
電話:03–5427–1542  メール:kikin-box@adst.keio.ac.jp

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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