【新 慶應義塾豆百科】
三田キャンパスの巨木
2025/07/31

三田キャンパスは50,000㎡の敷地面積を有し、そのうち「緑地」は15,000㎡におよぶ。敷地の30%が緑で覆われており、都会の中で、緑豊かなキャンパスが維持されている。
緑地の中には、高さ3m以上の樹木は424本あり(そのうち港区指定の保護樹木は26本)、樹種も様々で52種類におよぶ。イロハモミジが最も多く59本、ヤマモモ38本、サクラ35本、イチョウ34本などがあり、珍しい木では、オリーブ、ユズリハといったものも見られる。これらのほとんどは植栽樹木になるのだが、中には、アカガシ、スダジイ、カヤなど自生種とみられる樹種もあり、都会では、自生種は珍しいものとなっている。
その中でも、巨木とされる幹回り3m以上の木は13本ある。環境省の基準では巨樹・巨木とは、地上1.3mの高さの幹回り3m以上とされている。三田の巨木13本の内訳は、イチョウ8本、クスノキ3本、スダジイ1本、ヒマラヤスギ1本で、幹回り6mを超えるもの1本、4mを超えるもの2本である。
三田キャンパスの中でも圧倒的に大きい木は、稲荷山の演説館の裏にある大イチョウである(以下「稲荷山の大イチョウ」という)。幹回り6.5m、高さ22m、枝はり16m、樹齢は不明だが、江戸時代から存在しているもので、堂々たる佇まいである。
東京都内でも、有名な巨木はいくつかあり、善福寺の「逆さイチョウ」(国指定天然記念物、幹回り9m、高さ19m、推定樹齢700年)は別格としても、赤坂の「氷川神社の大イチョウ」(区指定天然記念物、幹回り7.5m、高さ25m、推定樹齢400年)、日比谷公園の「首賭けイチョウ」(幹回り6.5m、高さ20m、推定樹齢350年)といったものがあるが、それら巨木と比べても稲荷山の大イチョウは遜色ない立派なものである。
稲荷山は、三田の敷地の中で最も高い場所であり、今は、演説館が建っているが、江戸時代の島原藩邸の時代は、ここに稲荷社を祀っていた。ここから海が見え眺望絶佳であったという。そのような景色をこの大イチョウも見てきたのであろう。明治4年に慶應義塾となり、大正13年に演説館が塾監局北側から移築され、今のようになった。演説館の周囲は、キャンパスの中でも、奇跡的に手つかずで残され、また空襲の被害を逃れた緑多い場所である。
稲荷山の大イチョウの他にも、研究室棟前のクスノキ(幹回り4.7m)、図書館旧館横のイチョウ(幹回り4.5m)、中庭のイチョウ、塾監局前のイチョウなど、立派な巨木が残されている。これらの巨木はキャンパスを彩るとともに、慶應とともに長い歴史を見守りながら、静かに佇んでいる。
(管財部 渡辺浩史)
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