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【新 慶應義塾豆百科】
慶應義塾のダイバーシティ環境

2025/02/28

慶應義塾は、教職員・学生・生徒・児童が、互いの人格を尊重し、多様な価値観を認め協力して生きるための環境を構築し、多様性の受容に関する課題に迅速に対処するため、2018年4月1日「協生環境推進室」を設置。翌年には憲章を制定した本推進室は、ワーク・ライフ・バランス、バリアフリー、ダイバーシティおよびコミュニティ・エンゲージメントに関する事業推進を通じて、協生社会の形成を先導することを目的とした一貫教育校から大学・大学院、大学病院までを包含する全塾的な組織である。

義塾では「ダイバーシティ環境」について「協生環境」と独自の造語を用いて表現している。これにはさまざまな背景をもつ人々が互いに尊重・協力しあう協生社会の実現という理念が含まれており、先述の4つのテーマに関する環境整備や啓発活動などを、より広い視点と包摂的な観点から位置づけ「協生環境」の実現を目指している。

この理念の下、多角的な取組みを展開している。「ワーク・ライフ・バランス」では育児(KIDS)・介護(KIND)支援、悩みと仕事の両立支援(CARE)、看護師・助産師や学生向けの育児支援の総合プログラムの実施、また、大学病院等と連携し、からだのメンテナンス支援となる「Breezeプロジェクト」による専門医に相談ができる「からだ相談室」の設置や、定期的なセミナー開催等も行われている。

「バリアフリー」では、障害のある学生や教職員へのサポートを行い、特に学生については「障害学生支援室」を設置し「@easeプロジェクト」と称する全学的なバックアップ体制の整備を進めており、@easeサポーターと呼ぶ学生によるピアサポートも行っている。「ダイバーシティ」に関しては、国内外の関連機関との連携や、Pride Commitmentと呼ばれる環境整備を進め、2023年4月には、DEIの推進に関する基本方針を制定し、居場所づくりや相談体制の整備等を行っている。そして、「コミュニティ・エンゲージメント」では、塾生会議の提言を受け開始されるプロジェクトのサポート等を行っており、提言のあった全キャンパスへのウォーターサーバーの設置等を実現している。

社会がグローバルに、複雑に、多様に変わっていく中で求められるのは「広い視野」「真摯な姿勢」「寛大な心」すなわちインテグリティである。他に類を見ない広く、新たな視点を持つ「協生環境」の理念の下、多様な人々や考えが同じように尊重され、受け入れられる環境づくり、そして互いに尊重し協力しあう環境づくりを目指している。

(協生環境推進室事務長 黒田絵里香)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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