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【新 慶應義塾豆百科】
ライフル射撃場

2024/11/29

2020年に竣工した、日吉記念館の中に、新たな施設としてライフル射撃場が設けられた。スモールボア専用の射撃場で、主に体育会射撃部が利用している。扱っているものが銃であるので、射撃部員と一部関係者しか出入りができないよう、セキュリティも厳重だ。こういった施設を保有している大学は非常に珍しい。

射撃部は1924年に創部され、約100年の歴史を持つ。銃器を用いたスポーツ競技は、日本では競技人口も少ない。銃器を個人で所有するには、所持許可が必要で審査基準も厳しく、なかなか一般には馴染みがない。射撃部は、日吉蝮谷のエア射撃場を活動拠点としているが、スモールボアの練習は、以前は長瀞射撃場や伊勢原射撃場まで通っていた。

射撃競技は、ライフル射撃・ピストル射撃・クレー射撃があり、使う銃の種類などにより種目が分かれている。

スモールボアとは、50m先の標的を、22口径ライフルを使用し、3つの姿勢(膝射、伏射、立射)で、標的に向かって決められた弾数を撃つ競技である。精密な技術を要し、集中力をどれだけ維持できるかが勝敗のカギとなる。

記念館に設けられた射撃場は、覆道式(ふくどうしき)と呼ばれ、弾道を含めた部屋の壁・天井を全てコンクリートで覆っている。射座から標的まで50mあり、8射座設けられ8人が同時に射撃できる。標的は、電子標的となっており、赤外線センサーにより、弾の当たった位置がモニターに表示される。この一連のシステムはドイツから輸入した。銃弾は弾頭回収装置で飛び散らないようにし、標的の裏に換気口が設けられ、硝煙(火薬の煙)が充満しないようにしている。射座の周辺は木で覆われ、あえて木材にすることで、弾が誤って発射されても、跳弾しないで、木にめり込むようになっている。射撃音は壁面及び天井の吸音材で適度に消音されている。消音し過ぎると気分がおかしくなり、一方で消音が足りないと射手の聴力低下を起こしかねない。健康に直結するため、複数の室内射撃場を参考に、最適な吸音設定を行った。

日吉記念館の計画段階において、射撃場を設置することが決められたため、神奈川県警に問い合わせをしたが、先方も前例がないため、お互いに手探りの状態から始まった。日本における射撃場の設置基準は、昭和37年に制定された内閣府令に基づく。非常に厳しい法律で、細かい施設基準や管理方法が設定されているが、古い法律であるため、現在の競技に即していないところもある。計画段階より2年がかりで調整を行い神奈川県警に「指定射撃場指定申請書」を申請し「指定通知書」を取得することで、ようやく使用することができるようになった。

2020年5月、関係者が射撃場に神主をよんで安全祈願を行い、利用を開始している。

(管財部 渡辺 浩史)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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