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【新 慶應義塾豆百科】
小泉信三賞全国高校生小論文コンテスト

2023/12/28

福澤先生誕生記念会の中で行われる小泉信三賞全国高校生小論文コンテスト表彰状授与(2023年1月10日)

小泉信三賞全国高校生小論文コンテストは、卓越した研究者・教育者であり、優れた文筆家でもあった元塾長の小泉信三博士の人格と業績を後世に伝え、青少年の文章表現能力の向上に寄与することを目的として、同博士の没後10年を記念し、1976年に始まった全国の高校生を対象にした懸賞論文制度である。本事業は1967年4月から開始された小泉信三記念慶應義塾学事振興基金を原資として運用されている。この基金は小泉信三博士が学問の興隆を願っていたことに鑑み、学生の勉学、スポーツの奨励をはじめ、国際交流など教育支援を目的にしている。この一環でコンテストが運用されることになったのである。

慶應義塾の懸賞論文制度は、慶應義塾に学び日本の電力産業の発展に大きな功績を残した松永安左エ門の提唱で1953年に開始したのが始まりとされている。当初から塾生の勉学支援とアカデミズムの活性化を目的としていた。本高校生小論文コンテスト以外にも、1983年の創立125年記念の際には、懸賞論文・懸賞創作の募集が行われ、あわせて216名に及ぶ応募があった。こうした懸賞論文制度は、その後更なる発展を遂げて今日に至っている。

本コンテストは、小泉信三博士の命日である5月11日に毎年応募を開始する。例年、時流を意識した複数の課題のうち、1つを選択することになっているが、さまざまな切り口の福澤諭吉に関する課題が必ず1つ入るのが特徴だ。小論文として求められる文字数は6000字以上、8000字以内、かなり多い文字数のため、高校生が通常の授業のない、夏休みに書くことを想定している。8月下旬に応募の締切があり、選考を経て12月1日に、小泉信三賞、次席は各1名、佳作3名の受賞作を本誌と慶應義塾ウェブサイトに発表することになっている。

さらに、受賞作品は明年の本誌1月号に審査委員による厳しくも温かい選評とともに掲載される。また例年、新年の福澤先生誕生記念会の中で、小泉信三賞他、受賞者の表彰が行われている。

コンテストへの応募は、当初は原稿用紙に手書きしたものを送ってもらっていたが、近年は、ウェブサイトから小論文のデータを登録することになり、小論文コンテストにもデジタル化の流れが及んでいる。

手書きで何度も書き直すことはなくなったが、文章を書くという基本的な作業は変わらない。考えを言葉として紡ぎ出し、逡巡し、推敲を重ねる時間が、かけがえのない時間であり、受賞が大きな自信になったという受賞者が多い。青少年の文章表現能力の向上に寄与するというコンテストの目的は現在に脈々と受け継がれている。

(広報室)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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