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【新 慶應義塾豆百科】
入学手続の変革

2021/04/30

第一校舎に設けられた入学手続所で合格者へ手続書類を渡す(1987年)

2021年度の入試(一般選抜)において、合格者への入学手続書類の郵送がなくなり、入学手続はインターネット上ですべて完結するようになった。

昭和の時代は、大きな合格者番号表が掲示板に貼り出され、その前で受験生や家族が一喜一憂する光景が繰り広げられていた。満面の笑みをたたえた合格者たちは、旧南校舎の階段を上がって中庭を横切り第一校舎の入学手続所へ向かい、「おめでとうございます」の声とともに、入学手続書類を受け取る。そこからの手続はすべて対面の窓口で行われていた。

時代が平成に変わって3年目の1991年、入学手続書類の郵送が開始された。合格発表と同時に番号表が電子郵便で受験生全員に送付されてその日のうちに合否の確認が出来、翌日には合格通知と入学手続書類が届く。銀行振込をして、書類への記入を行い、それを封筒で送る形へと変わった。受験生と家族の負担が大きく軽減され、特に地方在住者への福音は計り知れない改革であった。

その後、20世紀の終わりとともに大きな合格者番号の掲示はA2サイズの小さなものになり、2004年からはインターネットによる合格発表が一部導入され、2005年からは受験番号ごとに合否を確認できるシステムがネットと電話の2つの方法で提供されるようになった。この仕組みの定着により、2009年を最後に合格発表の掲示は長い歴史を終えて姿を消した。

インターネットの利用拡大の流れを受け、2017年からはネット出願が導入された。これによって「願書を書店で買う時代」が終焉し、受験生は入学試験要項のPDFをダウンロードし、画面フォームに出願情報を入力する。調査書の郵送は残るものの、受験票ですら自分で印刷して試験に臨むという、全く新しい受験の形がここから始まった。

このネット出願の仕組みは、出願から入学手続までを一貫した流れで完了することと、推薦入試などの特別選抜にも導入することまでを考えて設計していた。合格発表は翌2018年からこの仕組みに合流し、合格者は入学手続要項や各種書類をダウンロードし、必要事項をフォーム入力する形へと変わっていく。推薦入試や塾内進学者の手続にも利用範囲が広がった。そして時代が平成から令和に変わって3年目の2021年、唯一残っていた振込用紙も自分で印刷する形となり、合格時の郵送物は廃止され、補欠許可者の一部に残っていた昭和の名残である窓口での書類交付や手続もすべてインターネットを介した手続へと変わった。

入学試験の出願から合格発表、入学手続までの流れが対面から郵送、そしてオンラインへと変化していく30年が終わり、入学試験の風景は新たなステージを迎えることになる。

(広報室)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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