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【新 慶應義塾豆百科】
慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)

2020/10/30

慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)は、慶應義塾大学のベンチャーキャピタルである。大学の成果を活用して革新的な新事業を創造するスタートアップに投資を行い、新産業を創出し、社会の発展に貢献することをミッションとして2015年12月17日に設立した。

慶應義塾大学の関連会社である(株)慶應学術事業会と野村ホールディングス(株)が、それぞれ80%、20%を出資し、資本金5000万円、資本準備金5000万円により設立した。代表取締役社長には、グリー(株)の共同創業者である山岸広太郎氏(1999経)が就任している。

慶應義塾大学では、従前から研究成果の出口戦略の一環として、ベンチャー企業の創出に積極的に取り組み、既に、医学部、理工学部、湘南藤沢キャンパスなどで数多く生まれた国内外特許の中から、慶應義塾大学発ベンチャーを支援し、数社の上場を果たしてきたが、KIIの設立により、慶應義塾大学の研究成果を活用したベンチャー企業の育成をこれまで以上に推進し、社会に貢献していくことを目指している。研究成果の出口として従来の大企業との共同研究、知的資産のライセンスに加え、自ら大学の研究成果を活用したベンチャー企業を育成することで、社会貢献を図るものである。

KIIの具体的な活動としては、慶應義塾大学の産学官連携を統括する研究連携推進本部と連携し、大学内の事業化可能なシーズを早期に発見し、内容に応じて、ベンチャー企業の設立や、公的資金の獲得、外部のベンチャー企業との共同研究やライセンスのコーディネート、ファンドを通じた出資などを行い、大学発ベンチャーの育成を推進している。

約45億円の1号ファンドは、投資回収を期待でき、慶應義塾大学の強みを生かせる分野である、医療、ヘルスケア、ITへの投資に特化して、19社に投資した。約60億円となる2号ファンドも、研究成果を活かして、デジタルテクノロジーによる社会の革新や、医療・健康などの課題解決に取り組むスタートアップを主な投資対象としている。シードフェーズ、アーリーフェーズを中心に、レイターフェーズまで20〜25社程度への出資が計画されている。

KIIは、今後もスタートアップへの投資育成を通じて、日本が誇る大学等の研究機関の優れた研究成果の社会実装を推進し社会貢献の一翼を担うと同時に、ベンチャーキャピタルファンドとして高い収益性を確保し持続的なイノベーションエコシステム(科学的な知識を用いて新しい技術や新しいアイディアを創造し、それを経済的・社会的に価値あるものとして、社会的ニーズを満足するプロセス)の構築に取り組むとしている。

((株)慶應学術事業会社長、慶應義塾塾監局参事 佐藤正明)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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