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【新 慶應義塾豆百科】
慶應学術事業会

2020/04/30

慶應MCCで学ぶビジネスパーソン

慶應学術事業会(以下事業会)は、1965(昭和40)年3月15日に慶應義塾および塾員・教職員の有志から資本金を募って設立された株式会社である。設立の目的・精神は、当時の義塾の財政状況がかなり逼迫していたこと、定年制の導入(68年4月より定年制施行)が間近に迫っていたことが深く関係している。財政面への貢献と定年制導入後の義塾の業務の継続性と定年退職者(特に労務職員)の労務問題を解消する施策として、株式会社(設立当初の社名は慶応事業部)の創設が決定された。その定款には「第2条に定める事業および収益により慶應義塾職員の福利厚生および退職後の生活安定の一助となることを根本精神とする」とうたわれている。

設立後、義塾からの要請により、食堂業務の引き受け、義塾への寄贈不動産の経理処理、三田キャンパス西南角地の買収、各キャンパス・学校・病院(伊勢、月が瀬含む)の施設管理支援事業として、従来義塾職員が行っていた、「宿直・日直」「警備」「プール管理」「ボイラー」「清掃」その他の業務を順次事業会が引き受けた。社名は、1967年8月に慶応商事に、96年2月には学術的な新事業を展開するために慶應学術事業会となり、今日に至っている。事業も時代の変化に合わせつつ、時代の要請により、新たな事業が加わり、現在は次の5事業を行っている。

1.プロパティマネジメント事業:現在は、信濃町、藤沢地区を除く施設管理業務を中心にプロパティマネジメント担当として義塾の管財部を支援。

2.保険事業:義塾の建物等全般の火災・損害保険、学生総合保険(在学中24時間、国内外適応)、教職員の福利厚生保険等を提供。

3.慶應カード事業:1996年1月に塾員および教職員を対象に始めたクレジットカード事業。収益は、義塾に還元している。

4.社会人教育事業:2000年10月から、三菱地所㈱との連携・協力のもと丸の内エリアに慶應丸の内シティキャンパスを開設し、主にビジネスに従事している人への社会人教育プログラムを提供。

5.2015年12月、慶應義塾大学の研究成果を活用して新事業を創造し、社会貢献および慶應義塾の研究面の発展につなげることを目的としたベンチャーキャピタル 慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)設立(資本金の出資を行い筆頭株主)。

慶應義塾を取り巻く環境は、IT、AI、ロボットなどの科学技術の進歩、環境問題等によって、未来に何をどう行うかが難しい時代になっているが、事業会は慶應義塾と一体になって考え、業務のコア面も支援する組織になってもらいたいと願っている。

(慶應義塾名誉参与、元慶應学術事業会代表取締役 平尾保弘)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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