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【新 慶應義塾豆百科】
芝共立キャンパスの薬局

2019/07/31

芝共立キャンパス薬学部3号館入口に、一般の地域住民が利用できる薬局があるのはご存知だろうか。

令和元(2019)年現在、全国に薬系大学は78大学あるが、附属薬局を併設しているのはわずか8大学である。この中でも、慶應義塾大学薬学部附属薬局は本学部(旧共立薬科大学)が6年にわたる準備期間を経て、平成13(2001)年に全国初の大学構内型として開設したものである。多くの附属薬局は、薬学部の校舎から離れたところにサテライトとして設置されている。その理由は、一般に大学のキャンパスは大きいので、大学構内に附属薬局を設置しても、公道から薬局までが遠くなるため、一般の利用者が見込めず、薬局として機能しないためである。

一方、芝共立キャンパスは都心に位置しているため、キャンパスは広くはないが、逆に公道から薬学部入口が近く、附属薬局を構内に設置しても一般の利用者が十分に利用できる。このため、大学構内型でありながら実際に地域住民が処方せん調剤やOTC医薬品(一般医薬品)購入に利用する保険薬局として機能しているのは当附属薬局が唯一となっている。

附属薬局が薬学部構内にある最大のメリットは、塾生と教員のアクセスが良好な点にある。このメリットを活かし、4年次の臨床準備教育では附属薬局の投薬カウンターを使って一般の患者さんに囲まれて臨場感と緊張感のある環境で服薬指導実習を行っている。また、5年次の薬局実務実習施設としても利用している。さらに、薬剤師免許を所持する大学院生や臨床系教員が実務経験の修得、維持・向上のために保険薬剤師業務を行う薬局としても活用している。

附属薬局は地域住民のかかりつけ薬局としての役割も担っている。住民の健康維持増進を支援するため、来局者の指先から微量採血した血液検体を測定し、血糖、血中コレステロールの状態を知らせて生活習慣病の予防・早期発見を推進したり、唾液から口腔環境を測定して口腔疾患予防を啓発するといった活動をしている。

さらに、年に一度の行事として芝大神宮の協力により大神宮の敷地内にて健康イベントを開催し、参加者の口腔環境や血糖、コレステロール値を測定して、広く生活習慣病の早期発見・治療の啓発活動を行っている。

附属薬局は専用の駐車場も完備していることもあり、地域住民に混じって塾員の方がかかりつけ薬局として活用していただけるようにもなり、塾員との新たな接点にもなりつつある。

(芝共立キャンパス事務長 石井宜明)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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