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【新 慶應義塾豆百科】
塾生家族地域連絡会

2019/05/31

2016年度「塾生家族地域連絡会」(茨城県水戸市)

慶應義塾大学の学部学生は約2万9千人を数えるが、その約3分の1が首都圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)を除く地域からの進学者である。多くは親元を離れて慣れない都会生活を送っている。郷里に残された両親・家族の方々のご心配のほどは容易に想像できる。安全でつつがない学生生活を送っているだろうか、息子や娘が学ぶ大学ではどんな教育活動が行われているのだろうか、と気になるのは当然である。はたまた卒業後の就職、進路と心配の種は尽きない。

「父兄懇談会」が始まったのは1963(昭和38)年。当時大学の規模が急速に拡大していく中、大学と塾生家族との間の意思疎通をより図っていかなければならないと考えられたのだろう。慶應義塾と学生・保証人(保護者)を結ぶ広報媒体『塾』(同年)・『慶應義塾大学報』(1966年)もこの頃創刊している(これらは後年『塾』に統合)。その後「父兄」という言葉は死語となり、会の名称は「地域懇談会」「塾生家族懇談会」「塾生家族地域連絡会」と変遷してきた。名称は変わっても、義塾の近況・勉学・学生生活・進路等について現地に出向いて直接ご説明し、大学を身近に感じていただこうという趣旨は変わっていない。

大学側からは、常任理事や学部長等の役職者および学事、学生生活支援、就職進路の各担当職員が、全国道府県に出張する。会当日は、役職者から義塾の近況について講演のような形でお話をする。つづいて担当職員から、塾生の勉学、学生生活や福利厚生について、最後に就職進路について説明を行う。ご家族の関心はなんといっても就職進路に集中しているのは昔も今も同じ。問題は、勉学にしても就職にしても、それこそ多様な学部に所属する塾生に関して、短時間に一律の内容で説明することは至難であった。そういう中で、ご家族に「今日は来てよかった」と思って帰っていただくにはどのようにお話しすればよいか、説明者の技量が試される。開催にあたっては、現地の三田会に何かとご協力を仰ぐことになるが、三田会の方からご家族に対して、大学教職員とは異なる観点での秀逸なご挨拶をいただくことがある。これがおそらくは他大学の同種の催しにはない味付けとなっていることだろう。

開催の時期は、台風や梅雨の影響を考慮しながら5月末から7月初めにかけて設定している。当初は道府県ごと4年に1度の開催であったが、回数を増やしてほしいとの要望も当然ながら強く、今では2年に1度の開催となっている。会場には主に県庁所在地のホテルを利用しているが、かつては経費節減のために公民館のような所を借りて、汗をかきながら設営したのを懐かしく思い出す職員も多い。

(元学生部事務長 栗谷文治)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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