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【新 慶應義塾豆百科】
広報誌「塾」

2019/01/31

2019年冬号[社中特別号]表紙

広報室が発行している広報誌「塾」が2018年秋号で通巻300号を迎えた。

「塾」の創刊は1963(昭和38)年。2018年現在、一般入試志願者の一都三県出身者は7割を超えるが、この年はまだ5割強(52.6%)。東海道新幹線も開通前(翌年開通)で、地方と東京との行き来が簡単にできる交通インフラはまだ整っていない時代であった。「塾」は、子供を送り出した保護者に対して、大学の状況や姿勢を伝えることを目的として創刊されたのである。

初年度は年4回、B5判・16頁建てであったが、評判も良く、翌年には年6回、36頁の冊子に成長する。教員が執筆する教育と研究に関わる様々な記事、保護者の座談会、学生の活躍ぶりや、学生と保護者のやり取りを紹介したり、慶應義塾の歴史や福澤諭吉に関するエピソードなど、多彩な企画が満載であった。

1965年、学費改定に際して学園紛争が起こった。これを契機に、翌66年、学生への情報提供を目的とした「慶應義塾大学報」が刊行される。タブロイド判半裁16頁、年6回(後に年10回)発行される情報紙であった。

80年代に入ると学園紛争も収まり、学生気質の変化もあって、「大学報」は学内ニュースとイベント告知中心の新聞に変わっていき、頁数をどんどん減らしていく。このような変化を受け、広報室は94年に大規模な読者アンケートを行ったが、文字量の多い「塾」はほとんど読まれていないことが明らかになった。この結果を踏まえ、両広報媒体の大規模なリニューアルを行い、「大学報」をB4判両面1枚ものに簡素化し、「塾」の対象者に学生も含めて、誌面の多角化と内容の充実を図った。一方で文字量を大幅に減らして読みやすくし、誌面をカラー化し、判型を小さくしたハンディタイプの冊子へと変貌したのである。

新しくなった「塾」の評判は良く、様々な場面に利用されるようになり、インターネットの普及に伴って2000年に「大学報」が刊行を終了すると、これも取り込み、別発行されていた「短大・諸学校ニュース」も同年に合流した。2005年に誕生した塾員向け広報誌「慶應SPIRIT」も2010年に「塾」に統合された。現在の「塾」は30~40頁で年4回発行の季刊誌となり、冬号は全塾員に送付される「社中特別号」となっている。

「塾」の表紙は、20号までは一色刷のシンプルなものだったが、1967年から塾員の版画家・駒井哲郎氏が担当、同氏の逝去後、75年から塾員の洋画家・清川泰次氏が引継ぎ、判型の変更後も継続された。2001年からは塾員の影絵作家・藤城清治氏がキャンパススケッチを描き、2005年からは各キャンパスの風景写真になっている。

(広報室)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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