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【新 慶應義塾豆百科】
大学案内とガイドブック

2018/05/01

GWが明ける頃には新年度の喧噪も落ち着き、大学受験の進学相談シーズンが開幕する。かつては高3生と浪人生が対象であった進学相談も、次第に高2、高1と年齢が下がっていき、中高一貫校が増えた現在は、中学3年生までが大学進学情報を求める時代となった。

大学側は情報提供ツールとして、建学の精神、学部のカリキュラム、学生生活、留学、奨学金、就職そして入試のデータ・情報を満載したカラフルなガイドブックを作成して、これに臨んでいる。しかし、昔はこのような充実した案内冊子は存在しなかった。

義塾は1978年度入試にあたり、B5判44ページからなる「大学案内」を初めて作成して願書に同封した。1学部わずか2ページであったが、学科専攻の特徴を簡単に紹介し、学生生活や就職情報などまでを広く扱っていた。折しも国公立大学の共通1次試験導入を翌79年に控え、大学受験のあり方が大きく変化していく時代。「大学案内」はモノクロで文字中心の冊子であったが、各学部はその記述に工夫をこらしていた。84年度入試からは、さらに学部紹介の充実を図り、ページ数をほぼ倍増の84ページまで拡大している。当時の進学相談では、この「大学案内」の前年度残部が、受験生への説明に使用された。

1990年、共通1次試験は私大も参加できる大学入試センター試験に変わり、義塾には総合政策学部と環境情報学部が新設され、SFCが誕生した。義塾の入学広報はここで次の大きな転換点を迎える。翌91年度入試にあたり、「大学案内」を補完するカラー版30ページのサブパンフレットを初めて作成し、好評を得た。93年春には、「大学案内」の内容も取り込み、1冊で慶應義塾大学全体を紹介できる「ガイドブック」へと発展。多くの大学がこの種の冊子を充実させていき、オープンキャンパスの開催も拡大するなど、競い合って入学広報をしていく時代を迎えた。義塾の「ガイドブック」もページ数を年々増やし、96年度からは判型をA4に拡大し、2年後にはついに100ページを突破するに至る。これに伴い、秋発行の「大学案内」は「ガイドブック」の抜粋版となり、2010年代になるとページ数を大幅に減じ、ネット出願の導入によって2016年度入試を最後に刊行を終了し、その歴史的使命を終えた。

「ガイドブック」のページ数はその後も増え続け、2017年度版は160ページもの厚さとなったが、その一方で、紙からネットへの転換も進行し、大学はホームページでの情報発信に力を注ぐようになった。義塾もサイトの充実に加え、動画による学部・奨学金・学生寮・学生生活などの大学紹介を開始している。

(編集部)
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