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【新 慶應義塾豆百科】
園遊会と卒業記念品

2018/03/03

園遊会(2000年)

3月は卒業のシーズン。今年度(平成29年度)の大学学部卒業式は、例年会場としてきた日吉記念館の建替え工事に伴い、パシフィコ横浜展示ホールに場所を移して開催する。かつては卒業式終了後、学部卒業生有志で結成された卒業準備委員会という学生団体による園遊会が開催され、共に卒業を祝っていた。ご記憶をお持ちの塾員の皆様も多いであろう。

「かつて」と記したのは、2008年度以降現在まで同委員会の立ち上げがなされておらず、園遊会は開催されていないという意味である。理由は、開催開始当初に比し、会の規模等が塾生自身で管理できる度量を超え、業者とのトラブル等も発生したことによる。園遊会は卒業準備委員会の花形活動とも言い得る、広く卒業生一般に周知された3000名前後の大規模企画であった。

卒業式後、各自思い思いのパーティー仕様の服を着飾って園遊会に参加するという一日仕事が、長年義塾卒業生の恒例行事となっていた。内容は、年毎に若干の違いはあったが、タレントパフォーマンスや豪華賞品が当たる抽選会、更に卒業アルバム委員会による当年度卒業生の入学から卒業までの軌跡を辿る映像放映、終了時は全員で肩を組んでの慶應讃歌合唱等が行われ、いわゆる卒業祝賀会として開催されていた。

また卒業準備委員会は、毎年キャンパス各所へ卒業記念品を贈呈し、卒業生と義塾を永続的に結ぶ大切な糧として機能させていた。例えば2004・2005年度には、後輩塾生たちへキャンパス内でのくつろぎの場を提供したいという配慮に基づき、三田キャンパス第一校舎前に、石造テーブル・椅子が贈呈され、現在も重宝されている。さらに歴史を遡れば、1980年代は構内案内図や催し物案内板、90年代は時計塔や藤棚・伝言板等といった形で、その時代を反映した物が選定されていた。

これら卒業準備委員会の諸活動については、開催に向け1年間、仲間と協力して同期の集いを成功へ導く園遊会運営の貴重な諸経験が、やがて卒業後十年に1度訪れる連合三田会大会実行委員の活動や、卒業後25年・50年の年度三田会主催募金事業等において確かな成果を生み出すためのリーダーシップを培う貴重な礎となっていた。花形の園遊会企画の一方、末永く思い出となり得る品を熟慮し選定するという地道な作業となる卒業記念品贈呈は、義塾と塾員を結ぶ強い絆であった。

卒業準備委員会の諸活動は、独立自尊の精神を体現する塾生ならではの大変意義深い活動であったと評価してよいだろう。

(日吉キャンパス事務センター課長 川田孝征)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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