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【新 慶應義塾豆百科】
三田キャンパスの樹勢調査と屋外整備

2017/08/08

三田キャンパス構内には多くの樹木がある。南校舎の建て替えをするにあたり、旧校舎周辺の記念樹類の大規模な移植を2009年春に行ったが、管財部ではその2年前から構内樹木の状況を詳細に調査し、保守管理の総合計画を立てて、構内の整備を並行して行った。知られざるこのプロジェクトについてご紹介する。

2007年当時、三田構内には幹周り50センチ以上の樹木が160本あまり、うち港区の指定保護樹木が約30本あった。例年は造園業者が葉や枝、樹皮、樹勢などを目視による外観からの「活力診断」を行いながら少しずつ手入れをしていたが、これを拡大し、通行の多い場所や保護樹木の計85本の調査を行った。そして課題が見られる40本については第2ステップとして、幹や根株の状態を細かく外観診断する「倒伏危険度診断」を実施。さらにこのうちの13本については、第3ステップとして機械(穿孔調査機器・音響波測定器)による精密診断を行った。そしてこれらの調査結果をまとめ、樹木の状態を5段階に分類し、維持保守計画を策定した。

樹勢に課題の多い樹木はキャンパス東側の福澤公園及び隣地との境界にあるサクラ類であった。ソメイヨシノは限られた原木のいわゆるクローンで、特定の病気に掛かりやすく環境変化に弱い理由ともなっている。また寿命は70年前後と言われており、戦後に植えられたものが、ちょうどその年数に近づいていた。

また南校舎建て替えのプロジェクトでは、学生たちの過ごす場所の確保が重要なテーマとして指摘されていた。そこで新南校舎内には学生が過ごせるラウンジやグループ学習室、学生食堂などのスペースを多く盛り込んだ設計をしたが、構内の他の場所にもスペースを確保することになった。生協食堂の営業終了後の開放や、中庭へのテーブル・ベンチの増設を行ったが、未活用であった屋外区域にも学生の憩いの場を作ることにした。これには福澤育林友の会からアドバイスをいただき、落葉広葉樹を多く残し、その下にテーブルやベンチを置くことで、夏は枝葉が天然の屋根として直射日光を遮り、冬は葉が落ちて暖かな陽光が降り注ぐ快適な屋外空間を自然が作り出すというプランである。

この施策に基づいて最初に整備したのは研究室棟西側のイチョウの周辺で、透水性のタイルで舗装、ベンチを整備し、飲料自販機を置いた。次は福澤旧邸跡地のエリアで、倒木の危険性の高いサクラや雑木を伐採して明るさを確保し、むき出しの地面には透水性タイルを貼った。

暗くてジメジメして学生が滅多に近寄らなかった福澤公園は、これによって快適な憩いのスペースに生まれ変わったのである。

(編集部)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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