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【新 慶應義塾豆百科】
慶應の水

2016/06/06

「慶應の水」は、2013年8月に誕生した。ボトルは三色旗がモチーフとなっており、紺地に赤色の細めのライン、中央にはペンマークが配され、キャップにもペンマークが添えられた上品かつシンプルなデザインが目を引く。

この「慶應の水」は、2007年に締結された山梨県及び富士吉田市との連携協定に基づき、地域資源を活かした地域活性化の調査研究を行うSFCの塾生たちにより、富士山麓の水を通じた人々の絆と文化を育む方策の1つとして提案され、具体化したものである。また、塾生・教員の調査の結果、標高約2,000mから富士山に浸み込み、約30年を経て湧出したバナジウムを多く含む弱アルカリ性の高品質の水であることが明らかとなっている。その口当たりはとてもやわらかく、ほのかな甘みを感じる。

塾生の企画を形にするにあたり、教職員も加わって具体化が進められたが、その際に重視されたことは塾生の提案にもある「慶應の水」に様々な意義を持たせることである。具体的には、現地の天然資源を製品化することも1つの地域貢献だが、さらに売上を義塾の奨学資金に充てること、また、製品化を行う企業側も売上を通じ、富士山の環境保全や地域活性化を支援する財団に寄与することなどである。なお、このコミュニティファンド(富士吉田みんなの貯金箱財団)も塾生からの企画により設立された。製品化は昭和4年創業の日本で最初にミネラルウォーターを販売した「富士ミネラルウォーター(株)」。公賓を招く席などの卓上水のほか、老舗飲食店等でも扱われている。

ペットボトルのデザインは、16の案から約40名の教職員による選考や塾生からの意見を経て決定されたが、そのデザインは、どのようなシーンにも用いられることを念頭に、国内外のホテルで使用されるミネラルウォーターのデザイン等を参考にしつつ考案された。その結果、一目で慶應らしさが伝わる色使いで、気品があり、幅広い世代に受け入れられるデザインに仕上がっている。また、裏面にはこの水に込められた意義が記されている。

こうして塾生、教職員、地域が協働し誕生した「慶應の水」は、その売上が奨学資金に充てられることに加え、生産側の協力も経て地域の活性化・環境保全にも貢献するという2つの意義をもつ特色あるものとなった。

現在は、塾主催のイベントや三田会の卓上水、オープンキャンパスでの配布など多くの場面で活用され、親しまれている。窓口販売と通信販売に加え、各キャンパスの自動販売機でも販売されており、来訪の記念に購入する者も多い。

(塾員センター 黒田絵里香)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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