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【執筆ノート】
『調べる技術──国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』

2023/04/28

  • 小林 昌樹(こばやし まさき)

    近代出版研究所所長・塾員

昨年末、本書を出したところ、神保町の東京堂書店や、丸善丸の内本店といった有名店で週間ベストセラーになり、とても驚いた。

発端は遊びに行っていた先の出版社社長に、自社のメルマガに何か連載を書いてほしいと言われたこと。そこで前の勤め先──国立国会図書館(以下、NDL)で毎日やっていたルーチン、調べもののノウハウを書き出してみたのだった。

NDLを2021年に早期退職したのは、出版史や読書史を研究しようと思ったからだが、俸給生活者を長く続けたせいか、「通勤」先があったほうがいい。そこで塾の非常勤講師を続けることにしたが、神保町の出版社、皓星社さん(拙著の版元)へも週1回、顔を出すことに。

そこでは近代出版研究会を開催し、2022年4月に『近代出版研究』なる年刊の研究同人誌を発刊。これも東京堂で瞬間、1位を取るなど、読書人に大好評だったが──私の「立ち読み」史がうけた──今回の拙著は少し違うようだ。

当初買ってくれた人たちはライター、校正者など、調べものを仕事とする人々だったらしい。私はNDL人文課のルーチンを書いたのだが、想定に反しビジネス書として売れたのだった。書店でのブレイクも、発端はブックファースト新宿店のビジネス書担当さんが平台に積んでくれたこと。担当さん曰く「自分が読みたかった」。丸善丸の内本店でも推してくれたのはビジネス書担当さん。本も売り方なのだ。

よく考えれば、拙著は卒論書きにも使える。読んだ学者さんに言わせると、学部生にはちょっと難しい、むしろ論文書きを指導する先生に適すとのことだが、卒論書きの学部生、院生にも役立つはず。京都大学の生協書店で1月、ベストセラー1位になったのはその期待の現れだろう。

じつは拙著発行直後にNDLの重要データベース「デジタルコレクション」が大拡大された。戦前図書や官報がメインだが、家の隣に帝国図書館が立ったようなもの。日本の人文社会系学問が書き換わってしまうので、あわてて、「大検索時代のレファレンス・チップス」と題してメルマガ連載を再開したところだ(版元サイトで読めます)。

『調べる技術──国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』
小林 昌樹
皓星社
184頁、2,200円〈税込〉

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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