三田評論ONLINE

【執筆ノート】
『文化 ─動詞から読み解く─』

2023/01/14

  • 秋畑 進(あきはた すすむ)

    雲南懇話会幹事・塾員

本書をどのようにして書いたのか、から始めたい。井上ひさしの名言を参考にした。易しいことを深く、深いことを面白く、面白いことを真面目に、真面目なことを愉快に書いた。テーマを「動詞」にしたのも一因。しかし正確に表現すべきところは論文調になってしまった。

傘寿を迎えて孔子が辿り着けなかった境遇となり、今まで得てきた知恵を文化という視点から書いた。体験したことや出会ったことなども入れた。10年かけて書いたものを編集していく。4部に分け、それぞれに序文を書き入れた。詳しくは「あとがき」を読んでいただきたい。Cultureは教養も意味していることもあり、教養課程の大学生とリスキリング、学び直す世代に向けて書かれている。

航空会社に奉じたので、遠すぎた南米を除いて異文化に触れ、適応してきた。航空輸送業は安全・安心を使命とした技術と文化をもつ。利用者に便宜をはかり、快適に過ごしていただく。提供者は日々研鑽する。機内の責任者になってからは緊急時の対応を胸に秘めながら、パフォーマンスを楽しんでいた。コミュニケーションの基本はお互いが相手の文化を学び、出来ることなら現地に行って共有することではないだろうか。

中年を過ぎてから仕事の目途もついたので登山にはまる。雲南懇話会(京都大学学士山岳会)に所属したのは、そのコンセプトに夢と好奇心があるからだった。この本もその延長で書いている。興味ある講師を推薦していく内に企画幹事を務める。

もう1つはまったのがタイ。関連会社に転籍してから休暇を使ってタイ人の部下や友人と国内を旅行。慣れたところで一人旅を続ける。第二の故郷になったのは、日本語を教える田舎教師になってから。タイに関する書物を約2,500冊(論文を除く)読んでは分類し、面白い箇所は引用しておく。その癖が本書に現れている。その内、ある校長と無二の親友となって『東北タイの天才校長』を上梓。6年前、実家に泊まった時、彼の息子の部屋にはタイ語に翻訳された日本の漫画本で本棚がいっぱいだった。その後、彼は日本留学しており、本書をタイ語に翻訳出版してくれることになった。この本にまつわる物語は未だ続くようだ。

『文化 ─動詞から読み解く─』
秋畑 進 
日本地域社会研究所
224頁、1,740円(税込)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

  • 1
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事