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【執筆ノート】
『なぜか聴きたくなる人の話し方』

2022/08/22

  • 秀島 史香(ひでしま ふみか)

    ラジオDJ、ナレーター・塾員

「うまく思いを伝えられない」
「会話がはずまない」
「緊張して言葉が出てこない」

仕事柄、こんなお悩みや不安について日頃から相談を受けます。仕事を始める前、学生時代からこういった悩みを友人たちと打ち明けあっては、「はあ、なんとかならないものか…」とため息をついてきました。

なにかと考えすぎてはアレコレ悩んだ10代は友人・異性とのひと言に一喜一憂。社会人になれば言葉の取り扱いの難しさにベソをかき、その後、ママ友との会話、子どもや親とのコミュニケーション、変化していくキャリアでどのように話すか。「話すこと」の悩みは何歳になっても尽きないと痛感する日々です。

そんな中、「人と会話をする」というこれまでの当たり前が急に難しくなってしまったコロナ禍の頃。私自身、ラジオから聞こえてくる何気ない話に、人の声が持つ安心感に、ホッと気持ちが救われることが増えました。在宅勤務も増えたこの時期をきっかけに、実際ラジオを聞く人も増えたそうです。「オンライン〇〇」など、コミュニケーションの新たな方法は増え続けていますが、一周まわって、「話すこと・聞くこと」という原点に戻ってきているのでしょうか。

なぜ「声だけ」なのに、親しみを感じるのだろう? ずっと聴いていたくなるのだろう。

言語化できれば、コミュニケーションにまつわる悩みの答えになるのでは。ラジオを愛する1人のリスナーとして、この世界に身を置くDJとして、いま再び注目を集めるラジオの魅力について言語化してみました。

もともと緊張しがちで人見知りで心配性なくせに、憧れだけでオーディションを受けて初めての番組をスタートさせて25年。数えきれないほどの失敗をやらかしてきましたし、いまだ内心ドキドキする瞬間もあります。だからこそ、同じお悩みの方が少しでもラクになりますように。そんな願いを込めて、生放送の現場で大切にしている「伝えるための」小さなコツや習慣などを書きました。日々のなにげない雑談から、「ここ1番!」という勝負時、ちょっと苦手な人とのやりとりまで、あらゆる場面でなにかのヒントにして頂けたら幸いです。

『なぜか聴きたくなる人の話し方』
秀島史香
朝日新聞出版
256頁、1,540円〈税込〉

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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