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【執筆ノート】
『入門講義 戦後国際政治史』

2022/06/29

  • 森 聡(共編)(もり さとる)

    慶應義塾大学法学部教授

国際政治の流れが速い。何がどう関連しているのか説明しにくい。日頃からこうしたもどかしさを感じていた時、慶應義塾大学出版会から国際政治関連の教科書執筆についてお話をいただいた。一般読者や初学者に、第二次世界大戦後の世界がどのような歴史を辿ってきたのか、その大きな流れをつかんでいただくのに役立つテキストを編もうと決心した。

何をどう書くか。第二次世界大戦の終わりを起点にするのはすぐに決まったが、世界のあらゆる出来事を網羅するわけにもいかないので、共編者の法政大学の福田円先生とも相談し、いくつか切り口を設けた。

まずは時期区分という縦糸である。第1章は、冷戦の開始から1960年代半ばまでの、各地で様々な危機が起こった冷戦の開始と激化の時期。第2章は、そのあと1970年代末までの緊張緩和の時代。第3章は、米ソの緊張が再び高まる「新冷戦」と、ドイツ統一で幕を閉めた冷戦終結期。第4章は1990年代初めから2008年のグローバル金融危機までのアメリカ一強の時代。そして最後、第5章は、そのあと新型コロナの襲来までの時期を取り上げた。ページ数の割合は、冷戦期4に対してポスト冷戦期3という比率になった。

横糸となるもうひとつの切り口は、国・地域別に配置した節である。これがおそらく本書の最大の特徴であろう。冷戦期の章では、第1節を米ソ、第2節を欧州、第3節を中東、第4節をアジア、第5節を日本に割り当てた。冷戦後の章では、ロシアを第2節に移した。各章の各節を縦に読むと、個別地域の国際政治の歩みをつかめる。

章ごとに節を順番に読むと、その時代の大国間関係と地域国際政治の相互作用などが見えてくる。国際政治史を単なる出来事の連鎖としてではなく、政治の歴史として捉えていただくために、各章・節の冒頭では、縦糸と横糸の交点となる「問い」を用意した。米ソはなぜ協調ではなく対立を選んだのか。緊張緩和はどの地域に影響してどの地域に影響しなかったのか。なぜ冷戦の終結は可能になったのか。なぜアメリカは中国と対峙するのか。やや重く聞こえるが、まずは本書で歴史の旅を気軽に堪能していただきたいと思う。

『入門講義 戦後国際政治史』
森 聡(共編)
慶應義塾大学出版会
320頁、2,860円〈税込〉

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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