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【執筆ノート】
『ビヨンド5Gが描く未来──2030年の技術・暮らし・ビジネス』

2022/04/07

  • 山中 直明(編著)(やまなか なおあき)

    慶應義塾大学理工学部教授、慶應義塾先端科学技術研究センター所長

今、社会を大きく変えていく新しい技術が、一つの点に向かって融合しようとしています。それが「ビヨンド5G」です。

我々はインターネットを通して、この10年に極めて多くのことを経験しています。アマゾンが勧める物を買い、ネットフリックスを見て、グーグルでドライブの目的地へと簡単に辿り着けます。とても便利ですが、よく考えてみると、我々のリアルはコンピュータが決めたとおりに行動させられているとも考えられませんか? ちょっと怖いとも思えますが、理想的、効率的、何よりも安全にコントロールされている、とも考えられます。すべての物、事、考えがネットワークにつながり、高度に発達したAIにより、人間をはるかに超えた組み合わせを考え、「最適」を見つけ、それに基づきリアルタイムでコントロールをする。それが「5G」の目指すことです。

「デジタルツイン」は、リアルとまったく同じもの(空間と時間)をサイバー空間につくり、サイバー上で制御します。その最大のアドバンテージは、無限のコンピューティングパワーによってあらゆる可能性をシミュレートし、最も良い結論を選択できることです。(グーグルのナビゲーションのように)個人個人をサポートして、とても豊かで、楽しい生活を効率よく実現できるものです。

本書は株式会社NTTドコモの「ミスター5G」こと中村武宏氏、わかりやすい解説でテレビでもおなじみのエコノミスト崔真淑氏との、株式会社東陽テクニカ主催の座談会から始まりました。主催者は無線技術のトレンドについての議論を期待したのですが、実際は5Gが目指すDX(デジタルトランスフォーメーション)、DXが生む社会、生活、さらに、クリエイトされるビジネスと、いわゆるシンギュラリティが生む将来像の話となりました。そう、「5G」とは、ネットワークとAI、そして自動運転に代表されるロボティクスの融合による、高度化したネットワーク主導型のサポート社会となることです。今こそ先読みして、ビジネスチャンスを捉え、未来に備えて技術投資や、産業を再考すべき時なのです。

『ビヨンド5Gが描く未来──2030年の技術・暮らし・ビジネス』
山中直明
慶應義塾大学出版会
212頁、1,980円〈税込〉

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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