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【執筆ノート】
『日本のオンライン教育最前線──アフターコロナの学びを考える』

2021/01/21

  • 石戸 奈々子(いしど ななこ)

    慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授、超教育協会理事長

文科省の調査によると、4月時点での同時双方向オンライン指導の実施はわずか5%。世界中で休校が広がる未曾有の出来事に直面し、各国が次々とオンライン授業を導入する中、日本は対応できないでいたのだ。それもそのはず、日本は学校ICT後進国だったからだ。

コロナ休校における日本の学校の対応はアナログそのもの。先生は各家庭に順番に電話で連絡をする。自宅学習用に紙のプリントが大量に用意され、先生方が1軒1軒ポスティングしてまわる。世の中はAI/IoTが支えるSociety 5.0 に移行しようとしている中、学校はデジタル化すら済んでいない、Society 4.0 にすらたどり着いていなかった現実を社会が知ることとなった。これ以上の対応の遅れはもはや許されない。

本書は、コロナ禍における自治体、学校、民間、保護者、子どもたちの奮闘の記録である。子どもたちの学びを止めない! 共通の強い思いを胸に、多くの人々が立場を超えて連携し、試行錯誤の中で最善を尽くした。

筆者らは約20年にわたり教育の情報化に取り組んできた。デジタル教科書等に関する法制度の整備、プログラミング教育の必修化、さらにはそれらを含む教育情報化推進法の策定、GIGAスクール構想の始動。2020年からいよいよデジタル教育がスタートできる! そのタイミングでの新型コロナウイルスの蔓延だった。結果的に学校ICT環境整備の動きを加速させたと言えよう。

しかし、世界はずっと先に進んでいる。Society 5.0 を迎えるに当たり、改めて教育を再デザインする必要があるのではないか。そしてそれは、全ての学習者を主体としたデザインであり、従来の学校の枠を取り払った学びの場「超教育」を構想することではないか。この分野に関心のある多くの産官学、オールジャパンの叡智を集結し、行動を起こすことが重要ではないか。

そのような考えのもと、2018年、「超教育協会」を立ち上げたところであった。超教育とはアフターコロナ教育といえる。今こそ未来の教育を全ての大人が手を取り合い創造すべき時だ。2020年を教育DX元年としなければならない。本書がその一助になればと願う。

『日本のオンライン教育最前線──アフターコロナの学びを考える』
石戸 奈々子
明石書店
272頁、1,800円〈税抜〉

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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