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【執筆ノート】
『森保ジャパン 世界で勝つための条件──日本代表監督論』

2020/02/07

  • 後藤 健生(ごとう たけお)

    サッカージャーナリスト・塾員

サッカーにせよ野球にせよラグビーにせよ、「監督」というとすぐに「采配能力」が取り沙汰される。対戦相手を分析して先発メンバーを決めたり、交代カードを切ったりする作業のことだ。交代させた選手が勝利を手繰り寄せるような活躍をすれば「名采配」として称賛される。

だが、それは監督という仕事のごく一部に過ぎない。選手というのは生身の人間であって、将棋の駒でもなければ、テレビゲームのキャラクターでもない。その日の身体的コンディションや心理状態によってスペックは大きく異なってくるのだ。

選手のコンディションを整えたり、選手の気持ちに訴えかけて100%の能力を発揮させたりするのも監督の重要な仕事だし、コーチなどのスタッフを含む組織作りも大事だ。

Jリーグ開幕前年の1992年に日本代表チームとして初の外国人監督ハンス・オフト(オランダ)が就任して以来、現在の森保一(もりやすはじめ)まで11人(延べ12人=岡田武史が二度就任)の監督が日本代表を率いてW杯に挑戦してきた。

国籍も、経歴も、性格もまったく違う11人の監督は、それぞれ個性的で指導法も多種多様だった。エキセントリックな性格のトルシエ。「自由か放任か?」と指導法を巡って議論を呼んだジーコ。そして、哲学的な話題で聴く者の心をつかんだオシムなどはご記憶の方も多いだろう。

各監督がどのように代表強化を目指したのか。そして、それがなぜ成功したのか(あるいは失敗したのか)。筆者は取材者として彼らとともに戦い、時には対立したりもした。本書ではそうした記憶を元に各監督の仕事を評論し、百点満点で評価した。

そうした過去を踏まえて、森保監督について中間査定をしてみよう。

森保監督は2019年1月のアジアカップで準優勝を遂げた後は、チーム作りを進めるよりも新戦力の発掘作業を優先してきたので、その分チームの完成が遅れてしまい、1月のU23アジア選手権では惨敗を喫してしまった。監督としては想定内なのかもしれないが、いずれにせよ今後は7月の東京五輪、9月以降のW杯最終戦に向けてチーム作りを急がなければならない。

お手並みを拝見しよう。

『森保ジャパン 世界で勝つための条件──日本代表監督論』
後藤健生
NHK出版新書
256頁、850円(税抜)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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