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【塾員クロスロード】
髙木 里沙:支えられて、続ける

2026/03/25

  • 髙木 里沙(たかぎ りさ)

    株式会社ovgo 代表取締役・2015理工修

私は現在、プラントベース(植物由来)のアメリカンクッキーを展開する「ovgo(オブゴ)」の代表取締役を務めている。もともとは投資銀行で働いていたが、よりビジネスの手触り感を持って働きたいと考えていた時、友人に声をかけられたのが、ovgoとの出会いである。プラントベースである点に魅力を感じ、国内にとどまらず海外への展開の可能性もあると思い、関わるようになった。

この事業を続ける中で、何よりも大きな支えになっているのは、お客様と従業員の存在である。店頭やSNSで商品を喜んでくださる声を直接いただいたり、思いがけず、知人がovgoのお客様になっていたと聞くことがある。多くの方に温かく応援されている事業だと実感する瞬間だ。

さらに印象的なのは、従業員の多くが、もともとovgoのお客様であり、今もなおブランドのファンであるということである。商品や世界観に共感して入社し、現場に立ちながら、その魅力を自分の言葉で伝えてくれている。その姿を見るたびに、この事業は、すでに多くの人のものになっているのだと感じる。

正解のない選択を迫られる場面は多いが、そのたびに、誰かの評価や一時的な数字よりも、「自分がこの事業を続けたいと思えるかどうか」を基準に、判断するようにしている。

そうした判断ができているのは、日々、従業員の成長に支えられてきたからである。現場で試行錯誤しながら、できることを増やし、自分なりの工夫を重ねていく姿を見るたびに、この人たちのために、もっと自分が頑張らなければならないと思う。正直、経営者としての自信はないが、従業員の成長に触れるたびに、この仕事を続けてこられたのだと思う。

私が代表を引き継ぐ決断をしたのも、会社を畳むという選択肢が現実的に見えた時、「ここまで頑張ってきた人たちに、絶望を味わわせたくない」という思いが強くなったからだ。事業としての合理性だけでは測れない、人の営みとしての重みを、この仕事を通じて学ばされている。

クッキーという小さな商品だが、誰かの日常を少し明るくできたり、食の選択肢を広げるきっかけになったりするのだとしたら、この仕事を続ける理由としては十分である。

これからも、海外も含めて、ovgoが大切にしてきた価値観や理念を、事業として成立させながら、少しずつ広げていきたいと思っている。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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