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【塾員クロスロード】
森本 均:南伊豆の自然に抱かれて

2026/03/11

  • 森本 均(もりもと ひとし)

    コテージ伊豆代表・1983商

伊豆半島最南端にある弓ヶ浜で家族向けのバーベキュー自然体験ロッジを夫婦で経営しています。青の洞窟サップツアー、堤防釣り、昆虫採集などをガイドしています。

卒業後はセコムに入社し、米国留学後本社の企画部門に配属されましたが、会社勤めの人生設計に疑問を感じ、心身の健康も損ねたので36歳で自主退職しました。

その後、焚き火がやりたくて厳冬の高尾山に山籠もりして日当5000円の林間作業員&炭焼き修行の生活を始めました。テント1枚、焚き火で3食煮炊き、ドラム缶風呂、排泄は雪穴を掘って大地に返す。そんな原始生活の中で私の体と心は徐々に蘇生していき、ただ生きていることの喜び、そして全身の細胞に生命の息吹が充満していくのを感じました。

自然の中に抱かれることによって疲弊した心身が蘇生していく、ああ俺はこんな事業をこれからやりたい、これが私の原点です。1999年の夏、友人が南伊豆弓ヶ浜前に所有する空き店舗を利用して炭火バーベキュー海の家食堂を開業。珍しさもあって行列を作り一夏の売上が220万円、それを元手に国民金融公庫に日参して融資担当を口説き落とし800万円の融資をとりつけ翌年ログハウス3棟を新築し、飲食業&貸別荘宿泊業を開始しました。

当時の私の海の家食堂ではヤキソバを注文するとお客さん自らが焚き火を起こして調理せねばならず、驚いて逃げ出す人も大勢いました。私としては、ヤキソバを売りたかったのではなく、ヤキソバ作りを通じて焚き火体験をしてほしい、という思いがありました。

それは宿泊業でも同じで、昆虫採集では冒頭に山に入るリスクと対策を説明します。ダニ、ヒル、スズメバチ、マムシ、猪……。ここで逃げ出すお父さんお母さんも少なくありません。でも私はヤキソバ同様、カブトムシを売りたいのではなく、自然と対峙するときの心構えや作法、家族が一丸となってお宝を見つけ出す感動を一生の思い出として持ち帰ってもらいたいのです。今の若い親御さんたちは田舎遊びの経験が少ないせいか、実は大型のミヤマクガタを発見して一番興奮しているのは平成生まれのお父さんたちです。

さて、今年で65歳です、これからも焚き火道楽を味わいながら生きていきたい、「若き血」を唱いながら一献できれば嬉しいです。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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