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【塾員クロスロード】
菅藤 佑太:教育とAIを繫ぐ補助線

2026/02/18

  • 菅藤 佑太(すがふじ ゆうた)

    manavigate株式会社取締役、東京産業新聞社取締役・2019総

SFCの鴨池をガラス越しに眺めながらCNSコンサルタントとしてメディアセンターで働いていた頃、同じ情報でも伝え方ひとつで相手の理解と次の一歩が変わる瞬間をたびたび目にしていました。困りごとに耳を傾け、言い換えと順序を整え、背景と選択肢を添える。それだけで、停滞していた人が動き出す。村井純研究室でインターネットの思想に触れ、自然言語処理の研究にも携わる中、社会を動かすのは技術そのものより、技術を人の手元へ届けるまでの「言葉」─意味づけ、翻訳、学びの設計だと気づかされました。

学びは「わからない」を「わかる」に変える営みです。定義を置き、問いを立て、たとえで支え、誤解の芽を摘む。生成AIも言語を媒介に知識を引き出し、推論を助け、表現を生みます。だから私は前提の置き方や問いの粒度を調整し「理解の最短距離」を探す試行錯誤を続けてきました。言葉が変われば理解が変わり、選べる未来が増えます。

この視点を起点に友人と創業。オンライン家庭教師と生徒が出会う仕組みを構築しました。狙いは良い先生を集めるだけではなく、学びに向かう手前で躓く人が最初の一歩を踏み出せる入口を用意することです。

自社YouTube「まなびスクエア」では難解な図形を「なぜそう考えるか」と解説するところから始めます。登録者数は約8.4万人、扱った問題は1,000問近くに及びます。視聴者から「あなたの説明だから見ていました」というハガキも頂き、正解より思考の伴走が求められると知りました。昨年末には『たった1日で誰でも開成・灘中の算数入試問題が解けちゃう本』という書籍を出版・増刷し、紙媒体でも補助線1本で世界が変わる感覚を届けました。

現在、その伴走を技術で拡張しています。学生時代から約10年間、機械学習に携わり、DeNAでは生成AIプロダクト開発と活用推進、自社では導入支援やワークショップにも取り組んでいます。現場の声を拾い、プロダクトと運用の両輪で定着まで伴走してきました。生成AIは、言語化して適切な問いを立てて初めて力を発揮します。核心は「人に代わって答える」ではなく「人が考え続けられる形に問いを整える」ことだと考えています。今後も私は教育と生成AIの間を往来し、誰もが迷わず進めるよう、学びの入口を広げる「補助線」を引き続けます。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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