【塾員クロスロード】
古荘 貴敏:地物(じもの)を纏う
2026/01/22
私は、創業148年を迎える、熊本に本社を構える企業、株式会社古荘本店の6代目社長です。
1877(明治10)年に創業した弊社は、衣料品事業を皮切りに発展し、現在は繊維卸・製造小売、IT機器・建築関連機材、携帯電話販売など多角的に展開する老舗企業です。
地域に貢献し続けるため、私たちは「感動共創」という経営理念を掲げています。これは、社員とパートナー企業が同じ方向を向き、お客様の想像を超える商品やサービスを提供し、共に感動を創り出す取り組みを指します。その理念を体現する象徴が、2022年に発表したファッションブランド「ubusuna(産土)」です。
ご承知のように、近年の衣料品業界は厳しい環境にあります。商業施設の売場は縮小し、業界全体の元気が失われつつあります。大量生産・大量消費のビジネスモデルはサステナビリティの観点からも時代にそぐわなくなりつつあります。そこで私たちは"手間を惜しまない少量生産の価値"に改めて目を向けました。そして、その答えは実は足元=地域の中にあると気づかされたのです。
自然に負荷をかけない日本の土着技術を服づくりに生かし、各地で失われつつある技や文化を未来へつなぎたい。また、日本の美意識と、西洋で培われた立体的デザイン哲学を融合することで、世界の人々に「日本的な美と心地よさ」を感じていただける服を届けたい。こうした想いを込めて生まれたのが「ubusuna」です。
ブランド名の「ubusuna」は、"生まれた土地"を意味する日本の古語──産土(うぶすな)に由来します。かつて日本の衣服は、風土や気候、生活文化、そして職人の技術から生まれ、古着や端切れとして世代を超えて循環してきました。それは、現代の大量消費・大量廃棄を前提とするファストファッションとは対極にあるものです。「土地と人と共に生き、循環する服」この"産土の服"という感性にこそ、サステナブルなファッションブランドとしての大きな可能性と魅力を感じています。
地域の素材や手仕事を守りながらビジネスとして成立させることは容易ではありません。しかし、それを続けることこそが文化の継承と発展につながり、他のブランドにはない価値を生み出すと信じています。
これからも「ubusuna」を通じて、ファンの皆さまに支えられながら、この道を歩み続けてまいります。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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古荘 貴敏(ふるしょう たかとし)
株式会社古荘本店代表取締役社長・2000法