【塾員クロスロード】
多治見 智高:茶割とバイオリンの狭間で
2025/11/12
日本茶と酒の接点を、線に、面に、立体に。しばらく前に登壇を頼まれたイベントにてプロフィール文の末尾に足してみた一文です。世界で一番、お茶とお酒を混ぜているバイオリニストは、僕で間違いないでしょう。
「お茶割り」という飲み物をご存じの方は、どれくらいいらっしゃるでしょう? 現在、関東や五大都市圏、あるいは茶業または酒類業に関わる人ならば、ほとんどの人に通じる単語となりました。このお茶割りの素晴らしさを伝え、広め、国民的ドリンクであると言われるよう普及活動を行う「一般社団法人日本お茶割り協会」の代表を務めています。
義塾を卒業した時、なんでもできますと大口を叩く生意気な若造に仕事を振ってくださった恩師や先輩、友人のおかげで、いわゆる就職活動をせず、7種の名刺を手に社会へ飛び出せました。その時の仕事の幅は妙に広く、やればなんでもできる、ということを教わったSFCでの学生期間に太鼓判を押してもらっているような気がして嬉しかったです。
ハイボールが一般化し、レモンサワーが流行の兆しを見せていた2016年、私たちのつくった専門店が「茶割」でした。そこから9年、まさかその時に開いてみた扉の先に、こんなにも魅力的な沼が広がっているとは思っていませんでした。
各地の茶・酒の生産者さんのもとを訪ね、それらを混ぜて人々に喜んでいただく、この繰り返しの日々を過ごしています。お茶割りのみならず、茶を原料の1つとして製造する醸造酒のプロジェクト「茶醸酒」もすでに5年目を迎え、12の製品を世に送り出せました。これが冒頭に記した、接点を、2次元に、3次元にとしていく、そのイメージです。
バイオリニストとしては、13年目にもなったアコーディオンとギターとのトリオ「代官山王国」を中心に、寺山修司さんの作品で知られる作曲家J・A・シーザーとのバンド「シーザーと紫乃蜃鬼楼」や「後藤まりこアコースティックviolencePOP」のメンバーとしての他、「演劇実験室◉万有引力」や「PK shampoo」への参加など、あらゆるジャンルで国内外にて活動しています。
干支一回りで1つの新しい柱を建てていきたい、そう思って生きています。あと何周できるかわかりませんが、好奇心を絶やすことだけはないように突き進む所存です。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
- 1
| カテゴリ | |
|---|---|
| 三田評論のコーナー |

多治見 智高(たじみ ともたか)
株式会社サンメレ代表取締役、一般社団法人日本お茶割り協会代表理事・2013総