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【塾員クロスロード】
吉田 あかね:変化が加速する時代のプロフェッショナルとして

2025/10/23

  • 吉田 あかね(よしだ あかね)

    PwC Japan グループ副代表・1995経

全ての事象が絶え間なく、さらに大きく変化していく現代において、企業や社会はその課題をどう解決していくべきなのでしょうか。私は2024年にPwC Japan グループの副代表・Chief Commercial Officerに就任し、監査や税務、コンサルティング、M&A(合併・買収)など様々な分野のプロフェッショナル達と一緒に、これらの課題に取り組む日本企業や官公庁を支援しています。

そんな私のキャリアは経済学部4年生の時に公認会計士2次試験(当時)に合格し、監査法人に入所したところから始まります。公認会計士に興味を持ったのは、慶應義塾女子高等学校の授業で経済を学ぶ機会を得たことがきっかけでした。当時、資本市場の重要性について社会の注目が高まっている中で、その番人として活躍する公認会計士の仕事に強く惹かれたことを覚えています。

2009年、私は主に国境を越えて行われる「クロスボーダーM&A」と、その効果を最大化するために必要不可欠な統合作業、PMI(Post Merger Integration)を支援するチームに所属していました。その前年に起きたリーマン・ショックは資本市場に大混乱をもたらし、実体経済にも世界規模の不況という形で影を落としていました。当時、財務体質が比較的健全だった日本企業による海外企業の買収が相次ぎ、PMIの重要性が高まっていました。

国籍、言語、価値観、企業文化、どれもが異なる組織の中でPMIを実施する際、多様性の受容やサステナビリティの観点が非常に重要になることを思い知らされました。この時、私が多様な価値観を踏まえながら前向きに仕事に取り組むことができたのは、慶應義塾中等部、女子高等学校といった一貫教育校での経験があったからだと思います。好きなことを探し、自律的に学び、培った学問と経験を頼りに自身の責任で行動する姿勢は、慶應義塾で育まれたものであり、ビジネスパーソンとしての私の背骨になってくれています。

最近では生成AIに大きな注目が集まっていますが、この革新的な技術が社会や経済の様々な変化を加速させていくのは間違いありません。社会の分断化にどう立ち向かうかという点もさらに難しさを増すでしょう。変化が加速する時代のプロフェッショナルとして、「独立自尊」の精神で様々な課題と向き合い続けていきたいと考えています。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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