【塾員クロスロード】
青田 泰明:あの日の募金から
2025/04/15

原点は1995年の阪神・淡路大震災。中学生だった自分は、最寄り駅前の募金活動に僅かな金額を寄付することで精一杯でしたが、本心では現地でのボランティア活動に強烈に惹かれていました。その時から心の奥底で燻り続けていた想いが、2011年の東日本大震災直後に大きく弾け、現在の本業にも繋がる人生の重要な契機となりました。
当時は既に学校勤務の身でしたが、2011年からの3~4年間は足繁く東北へ通い、30代前半の熱量の多くを被災地での炊き出し活動に費やしました。活動中の不測の事態はもはや日常茶飯事で、特にNPOを立ち上げてからの数年間は悩むことばかりだったものの、そのような状況だからこそ、物事を粘り強く続けることの大切さ、また、スピーディな行動と柔軟な思考の重要性を、実体験を通じて強く学ばせて頂きました。宮城県や岩手県、福島県での印象的なエピソードを挙げれば本当にきりがありませんが、被災地での多様な経験の蓄積は、2020年の学校長就任と同時に起きたコロナ禍の際にも、そしてそれ以降の学校経営の中でも、存分に生かすことが出来ていると感じています。
私立学校の強みは、やはりスピード感と柔軟性にあると考えます。変更したい事案があれば年度途中でも容易に対応出来ますし、場合によっては即日決裁も不可能ではありません。髪型や制服などの校則の問題、ICTや生成AIなどに関わる教育DXの問題、非認知能力の育成や大学受験に向けたカリキュラムの再構成など、今の学校には取り組むべき課題が山積していますが、だからこそ動き甲斐があり、考え甲斐があり、何よりも挑戦し甲斐があると思っています。そしてまた、こうしたマインドは間違いなく、被災地支援活動を続けてきたからこそ自分の中に確立されたものだと認識しています。
振り返ってみると、1995年のあの日に芽生えた想いには、社会に貢献したいという意識だけでなく、きっと「自分の可能性に挑戦してみたい」という願望もあったのでしょう。今後も、二足の草鞋というわけではありませんが、学校とNPOという2つの拠点に身を置きつつ、VUCAと呼ばれる今の時代にこそ必要なクリエイティビティを生徒たち、また被災地の方々に届けるために、新しい挑戦に身を投じ続けていきたいと思っています。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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青田 泰明(あおた やすひろ)
私立青稜中学校・高等学校学校長、NPO法人被災地支援団体あおぞらん理事長・2002政・05社研修・08社研博