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【塾員クロスロード】
野毛 慶弘:ロボットで農家を支える

2025/03/21

  • 野毛 慶弘(のげ よしひろ)

    株式会社レグミン代表取締役・2011商

「農業界に安定した労働力を提供する」というミッションを掲げ、レグミンは近代日本経済の父と称される渋沢栄一翁生誕の地、埼玉県深谷市で農業ロボットを開発しています。

レグミンは、体育会野球部出身の私と、同級生で弓術部出身の成勢卓裕の2人で、2018年5月に設立しました。私が農業部門を担当し、成勢が開発部門を担当しています。

2016年、野球部同期の敏腕マネージャーの結婚式で成勢と再会し、2人とも農業での起業を考えていたことを知った知人が「2人でやれば?」との一言で、共同創業することになりました。

私は農家の親戚が多く、また銀行員時代に農家や青果市場の支援をした経験から、農業での起業を考えていました。一方、成勢はヨーロッパ出張の際にオランダの農業に触れる機会があり、日本の農業には大きな伸び代があると感じていました。

2人で起業すると決意し、日本全国の農地を巡り、農業界における課題を調査。その中で、人手不足という課題に着目し、農業ロボットを開発する会社を設立するに至りました。

慶應義塾で過ごした経験の中で、スタートアップ経営の際に生きているのは、2人とも体育会を最後まで「やり抜いた」ことだと私は思っています。起業して間もなく7年が経ちますが、体育会で過ごした4年間が無ければ、ここまで会社を続けることはできなかったでしょう。日々減っていく預金残高、思うようにいかないロボット開発、苦悩の毎日ですが、体育会で培った気合と根性で何とか困難を乗り越えています。

日本の農業従事者は減少傾向が続いており、2020年は136万3000人と、2005年の224万1000人と比べると39%の減少。農業従事者の平均年齢は69.2歳という危機的な状況です。

こうした問題に対し、解決策として農業ロボットを開発しています。主軸製品は自律走行型農薬散布ロボットで、開発するだけではなく、社会実装のために、自社でそのロボットを使用した農薬散布代行サービスを展開。

さらに、生産現場だけでなく、出荷や加工のプロセスの自動化、具体的にはブロッコリーカット機の開発にも取り組んでいます。

日本の農業界の人手不足解消のため、これからも2人で力を合わせ、挑戦し続けます。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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