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【塾員クロスロード】
大須賀 麻由美:和菓子と歩む道

2025/02/19

  • 大須賀 麻由美 (おおすが まゆみ)

    和菓子職人、NPO法人日本伝統文化交流協会理事・2003法(通信)

義塾を卒業後、私は法律家を目指して勉強していましたが、家業を手伝うこととなり、その夢に区切りをつけました。数年で事業が軌道に乗ったため、弟に経営を譲り、幼い頃から興味のあった製菓・製パンの道へ進みました。実家は大正時代から赤坂で日本料理店を営んでおり、幼少期から料理に触れ、食の世界に親しんでいたことが影響したのだと思います。

製菓学校と製パン学校で学び、有り難いことに学園長賞や最優秀賞をいただきました。卒業後、現場経験を積む中で「日本人にとって体に良い食材とは何か」「誰もが安心して美味しく食べられるものを作りたい」という想いが強まりました。試行錯誤を繰り返す中で和菓子の素材に魅了され、さらなる学びを求めて東京製菓学校和菓子専科に入学。在学中から老舗和菓子店で修業を積み、技術を磨きました。

現在は独立し、和菓子の受注製作のほか、講演やワークショップを通して和菓子の普及に努めています。一昨年には和菓子技能検定1級(国家試験)を取得し、今は諸先輩方に指導を仰ぎながら最難関の選・和菓子職取得を目指して日々精進を重ねています。

また、昨年は『本格あんこが作れる本』(世界文化社)を出版し、今年3月には同社から新しい和菓子の本を出版予定です。これまでの経験を活かし、幅広い世代に楽しんでいただける内容を目指しています。20代の頃は、このような未来を全く想像していませんでした。しかし、何かを追求する楽しさを大切にしてきた結果、今の道に辿り着けたことを思うと、挑戦し続けて良かったと感じています。

最近では、和菓子を食べたことがない子どもたちも増えています。せっかく日本に生まれたのですから、自国の文化をもっと楽しんでほしいという願いを強く抱いています。和菓子をはじめ、日本文化には多くの要素が絡み合い、広がりを見せる魅力があります。数百年続いてきた文化は、ただ古いものではなく、時代を超えて愛され続ける「究極の定番」です。

これからも日本文化と協力しながら、その豊かさを多くの人に伝え、未来へつなげていきたいと考えています。


※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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