【塾員クロスロード】
森下 矢須之:かなりアブナイ美術館
2024/12/12

圧倒的な質と量の古代中南米美術品をコレクションし、「日本と古代アンデスを繋いだ4人の日本人の1人」と称せられる祖父、森下精一。私は、そんな祖父のコレクションと身近に接しながら育ちました。
大学ではラテンアメリカ研究会(当時)に所属し、2年の夏には塾主催の使節団の一員として中米とメキシコに長期滞在し、現地の学生と交流したり各国の古代遺跡を訪れたりしました。それが後に、メキシコ国立自治大学に留学するきっかけとなったのです。
メキシコ大では歴史と民族学を履修しましたが、休日にメキシコ全土の古代遺跡を巡ったこと、そして何よりも当時現地にいた日本人考古学者たちとの知己を得たことは、今でも私の大きな財産です。塾卒業後は家業を引き継ぎ、50代半ばで祖父が残してくれた現BIZEN 中南米美術館の理事長兼館長専従となり、現在に至っています。
若い頃から国内外数多くの美術館を訪れていた私ですが、ビジネス視点で見ると疑問に思える制約や不便が少なくありませんでした。例えば、展示場内は一切撮影禁止、感動しても声を発してはいけない、スマホの充電コーナーもない、監視員は各所に配置しているのに展示品に関する質問を受けたり解説してくれるスタッフはいない等々です。
弊館ではナンセンスな制約を取り払い、時間を決めて館長の私自ら館内ガイドを実施しています(古代の笛を吹いたり、本物の作品を手でお持ちいただいたりも)。勿論お客さまを見張り注意だけをする失礼な監視員は配置していません。そうした取り組みの結果、グーグルレビューは★4.4で、うれしい入館者コメントも多数いただいております。
好評価のサービスを実現した弊館の次なる重点テーマは広報です。現在3千人で日々増えているユニークなサポーター会員の募集・組織化と運営や「かなりアブナイBIZEN 中南米美術館」というキャッチコピーと強烈なインパクトのデザインによる美術館らしからぬ告知は、マスメディアやSNSでもしばしば取り上げられています。
最後に、令和7年1月29日~2月14日、銀座三越で「濃厚なチョコレートの歴史展」を開催致します。期間中は私も常駐してガイドやトークショーを行います。ぜひご来場のうえ、気軽にお声掛けください。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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三田評論のコーナー |
森下 矢須之(もりした やすゆき)
一般財団法人BIZEN中南米美術館理事長兼館長・1979経