【塾員クロスロード】
吉野 亜衣子:「パリ症候群」をぶっとばせ! でフリーペーパー10周年
2024/07/24

華の都パリに来てみたけれど、ニコリともしない店員さんに言葉が通じず、落ち込んで歩いた道路でスリに囲まれ……。渡仏前に憧れていたオシャレで素敵なパリと実際のパリとのギャップに打ちのめされる、いわゆる「パリ症候群」。夫の1年間の留学についてやってきたパリにはそんな日本人が何人もいました。そこで、AMラジオ局で生活感あふれる情報を伝えてきた私なら、偏りのないリアルなパリを伝えることができるかも、とフリーペーパー「ノアゼットプレス」を立ち上げたのです。
前職のラジオ局で、退職して帯同か日本に残るか、の2択を迫られ、番組を担当していた高田純次さんの「パリなら行くね」、大竹まことさんの「会社員なんてやめちまえ!」という、いい加減なおじさんのアドバイスに背中を押され、退職してパリに来た私。
意図せず無職になった悔しさをバネに、着いた翌日から大忙し。蚤の市で買ったポットの底に穴があいていたり、電車で隣になった女の子とトークしていたら携帯を盗られたり、トラブルは星の数ほど。こちらも負けじと、フランス人カラオケパーティに参加、シャンソン・サルサ・チーズのお稽古等々、必死でフランスを味わい尽くしました。その結果、わがままで幸せそうなフランス人と、汚くて美しいフランスがすっかり好きになっていたのでした。
「ノアゼットプレス」では、弁護士、元漫才師、バンドマン、専業主婦など、毎月他の雑誌に載らないような普通のフランス人にインタビューしています。他にも、パリ在住ライターによる辛口レストラン情報、パリコレ裏話、簡単フレンチレシピやフランス語下ネタことわざなど、クスッと笑ってフランスを好きになれる情報を提供してきました。
今年3月には10周年記念本『パリに住みたくなったら読む本──フランス人120人に聞いた赤裸々暮らしナビ』(税込1,650円、amazonで発売中)を出版。これまでのフリーペーパーから特に面白い記事を抜粋した特選集と、新たに付け加えたグルメライターのおすすめレストラン情報などが加わった、読み応えのある本となりました。かわいいだけじゃない魅力いっぱいのフランスをご覧いただけたらと思います。
もうすぐパリオリンピック。熱戦の裏に面白フランスがチラチラ垣間見えると思いワクワクしています。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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吉野 亜衣子(よしの あいこ)
フランス情報フリーペーパー「ノアゼットプレス」編集長・2005政