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【塾員クロスロード】
大﨑庸平:熊野古道に魅せられて

2023/11/29

  • 大﨑 庸平(おおさき ようへい)

    株式会社日本ユニスト・マーケター・2018商

熊野古道の集客はコロナ禍で苦戦を強いられました。外国人観光客が爆増して7年で3500%増した「巡礼道の世界遺産」、しかし入国規制によって被害を大きく受けた地域の1つでもあります。

私はテーマパークでのマーケティング経験を元に、この地域と熊野古道の宿に貢献したい思いでワクワクしていました。都会の施設での集客と地方での集客は勝手が違う。だからこそ次の挑戦のフィールドが世界遺産の山奥に眠っていると思うと、大きなやりがいを抱いていました。

実際熊野古道に何度も足を運び、同僚・友人・恋人・1人で歩いては自分の心が揺れ動くのを実感していました。私は熊野古道沿いに宿泊施設を建てて運営する大阪の不動産会社に入社したことをきっかけに、この地域と深く向き合うことになります。

自然・歴史・信仰がかけ合わさった1500年の人の営みを感じるこの道は、時に自分を振り返る内省の場であり、時に達成感を感じるトレイルであり、時に神秘的な感覚となる瞑想の道だと考えます。世界中の人がこの道に魅せられていますが、最も身近な日本人はほとんどがこの魅力に気づいていません。

熊野古道沿いにSEN.RETREATという宿のブランドを展開するにあたり、大きなやりがいを感じています。

1つ目は宿が地域に与える経済効果を強く実感できることです。これは地方特有かもしれません。例えばSEN.RETREAT がトレッキングシーズン以外やコロナ禍でお客様を呼べれば、リネン業者・薪業者・食事提供会社・清掃スタッフ等にも経済的効果を与えられます。そのため地域に影響を与えるという誇りを持ちやすいです。2つ目は地域文化を広める大義と宿の集客行為が合致すること。これは論語と算盤のような感覚です。SEN.RETREAT は何度かテレビに放送してもらうことができましたが、その度に熊野古道の文化や魅力が一緒に伝わっていきます。

先日行った調査では、熊野古道の認知度は79%に上りますが、宿泊したことがある人は3.8%に留まります。熊野古道は未だ伸びしろに満ちた世界遺産です。「熊野古道に強いブランドを作る」、これはブランド作りが専門の私の役目であり、熊野古道に魅せられた私達だからこそできることだと思います。これからも半学半教の精神で地域を活性化していきたいと思います。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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