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【塾員クロスロード】
伊藤良太:異彩を、放て。

2023/08/29

  • 伊藤 良太(いとう りょうた)

    株式会社ヘラルボニー人事責任者・2015環

2022年7月、プロバスケットボール選手を引退した。新たな挑戦として選択した道が「ヘラルボニー」という企業である。

「子ども達が公平に歩みやすい社会を創る」が私のビジョン。2018年2月、住んでいる地域や家庭環境によって好きなことに挑戦できない子ども達がいる事実を記事で知った。電流が体に流れ、使命感に駆られた瞬間であった。

翌年、ビジョンを実現すべく、大手保険会社からプロスポーツ選手へ転職した。もちろん不安もあった。ただ、その時脳裏に浮かんだのは記事で見た子ども達の姿。そして、「もしプロスポーツ選手になれたのに選択しなかったら死ぬ瞬間に後悔しないか?」この自問自答が決め手だった。

プロスポーツ選手としての日々は充実していた。好きなスポーツを表現することに加え、子ども達へのクリニックや学校での職業講話といった活動。ビジョン実現に向けて、一歩ずつ歩めていると実感していた。

だが、シーズン途中でコロナが流行、そして中断。様々な活動がストップし、プロスポーツ選手の価値を考える機会となった。なぜ、プロ選手に転職したのか? ヘラルボニーに出逢ったのはその時だった。

コロナ禍、折角ならカッコいいマスクをしたいと思い、SNSを見ていたら「素敵なアートマスク」が目に入った。早速コーポレートサイトに飛んだら強烈な言葉が目に飛び込んできた。「異彩を、放て。」、ヘラルボニーのミッションだ。このことが1つのきっかけとなり、引退後、ヘラルボニーへ転職した。まだプレーできるのになぜ? 選手として脂が乗ってくる時期なのに? と言われたこともあったが、迷いはなかった。「異彩を、放て。」のミッション実現の先に、私のビジョン実現に繋がる道もあると信じていたからだ。この1年間、心を揺さぶられる瞬間が数多くあった。何よりビジョン実現に向けて歩めていると実感できていた。

今年7月、新たな挑戦を選択した。プロ選手への復帰だ。ヘラルボニーとプロ選手の二刀流である。不安はあるが、好きなスポーツを選択できる環境に自分はいる。もし、好きなことを選択すらできない子ども達がいるなら、そこに向けてアクションし続けたい。まずは、自分から。異彩を、放て。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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