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【塾員クロスロード】
正能茉優:地域を動かすのは、企画書ではない

2023/06/20

  • 正能 茉優(しょうのう まゆ)

    (株)ハピキラFACTORY代表取締役・2014総、23政メ修

「この栗鹿ノ子(くりかのこ)がかわいかったら、もっと多くの人に小布施町の魅力を知ってもらえるかもしれない」

SFC在学中に抱いたこの想いから始まった、地域のモノを“かわいく”して発信・販売する会社ハピキラFACTORYの活動も、今年で12年目になります。

私が地域に関わり始めたきっかけは、2010年の夏、SFCの清水唯一朗先生のご紹介で、長野県小布施町のまちづくりインターンシップに参加したことでした。

当時はまだ「地方創生」という概念もなく、まちづくりと言えば都市計画や建築に関する取り組みがメインだった頃。そんな中、偶然参加したインターンで出会った、小布施というまちが大好きになり、小布施の銘菓「栗鹿ノ子(小布施堂)」を同世代向けに“かわいく”して、発信・販売することを始めたのでした。

その後ハピキラFACTORYの活動は小布施町にとどまらず、北は北海道から南は佐賀県まで、日本中の地域のモノを“かわいく”する機会を頂いてきました。起業した当初は自らの手でモノを生み出すことに強いこだわりを持っていましたが、その後はモノをつくることができる人を育てたり、組織をつくったり、と地域との関わり方を少しずつ変え、現在も活動を続けています。

2018年度から始めた「まろん大学」は、慶應義塾大学大学院の特任助教として、現役のSFC生たちとともに、学生たちの目線を活かしながら、地域のモノづくりに取り組むプログラムです。昨年度は東京會舘様とともに、『ミシュランガイド東京2023』の1つ星を獲得した「レストラン プルニエ」のアミューズや「スイーツ&ギフト」の商品として、小布施のリンゴを使った商品を展開させていただきました。

在学中の学生たちと日々活動させてもらっていて感じるのは、企画や企画書のつくりは多少粗いものの、そこにある学生たちのまっすぐな想いが、地域や社会をグッと動かしていくということ。私は今年でSFCを卒業して10年目になりますが、学生だった頃に比べれば、経験も重ねて、創意工夫もそれなりにできるようになってきました。

ただ、そんな今だからこそ、まっすぐな地域への想いを、そして社会への想いを大切にしていきたいと、学生たちの姿を見ていて改めて強く思うのです。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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