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佐々木大樹:レーシングドライバー人生

2023/06/13

  • 佐々木 大樹(ささき だいき)

    レーシングドライバー・2014法

7歳の時に初めて乗ったレーシングカートが始まりでした。カートというと一般的には遊園地にあるようなものを想像すると思いますが、実際は一番速いもので体感速度は300キロとも言われています。カートに乗ることになったのも、自分の意思ではなく、父親に面白いところに連れていくと言われてのことでした。初めは、スピードを出すのも怖くて、アクセルも全然踏めず、小心者の自分には向いていないなと思ったくらいでした。

でも、車を運転するのはやっぱり楽しくて、怖さが取れてくると、少しでも速く走りたいと努力していったのが自分の始まりです。そこから様々な大会に出て結果を出し、17歳の時に自動車メーカーである日産のドライバーとしてデビューすることになりました。レースで運転している時は1人なので、個人スポーツのように思われるのですが、実際は違います。車やタイヤの開発競争が常日頃から行われ、ドライバーが速く走るだけでなく、レースに出場するまでに、たくさんの人が関わって車やタイヤを作り上げてくれています。その過程で、何がベストなのか、たくさんの人とコミュニケーションをとり、計画・実行をして、それをまた次に活かして車を速くする作業をしています。多くの人が分業している中で、何か少しでも噛み合わないと優勝はできません。自分がレーシングドライバーになったのもそこに魅力があったからでしょう。

一筋縄では行かず、一からみんなで作り上げていった先に、優勝という成功につながる、そこまでのプロセスが非常に難しく困難だからこそ、レースで勝つことにドラマがある、これが自分がレーシングドライバーを志した理由だと思います。努力してきた成果を出した時に、たくさんの仲間と感動を共有できる瞬間のために、レースを頑張っています。

これだけの人が努力をしている中で、最後にそれを優勝という形で表現できる、レースのゴールに車を運ぶことができるのはドライバーだけです。だから、自分は絶対に諦めないし、最後まで自分の持っている力を100%出し続ける、当たり前のことかもしれませんが、これを心がけています。みんなの思いを背負って走っていることを忘れません。そんなレーシングドライバー人生を楽しんでいます。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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