【塾員クロスロード】
朝香:温泉で美容・健康増進と地域活性化
2023/05/30

私の人生は2015年9月6日に一変した。青信号で横断歩道を渡っていた時に、左の視界に車が見えた。あっ! と思った時には左足の指をタイヤに踏まれたまま地面にたたきつけられた。足が変な方向に曲がった感触を今でも忘れられない。
それまでモデルとしてファッションショーや広告に出演していたが、ヒールの高い靴を履けない使い勝手の悪い人間が生き残れるほど甘い世界ではない。大腸がんなどそれまでも様々な壁を乗り越えてきたが、今回ばかりはどうにもならなかった。
大腸がん術後の療養と足のリハビリで湯治に通っていたところ、足は少し後遺症が残ったが、大腸がんの手術跡はほぼきれいになった。温泉には病後の回復期をサポートする力が期待できるとは知っていたが、目の当たりにした衝撃は大きかった。
アトピー性皮膚炎でもあるが、傍目からはわからないほどに肌の状態が安定したこともあり、モデル時代に得た美容・健康の知識と温泉の良さを合わせれば、身体も心もより健康にできるのでは? と思うようになった。温泉につかると心も緩むので、湯を共にしただけの初対面の人とも気軽におしゃべりできる。また、温泉地という非日常へ赴くだけでも気持ちがリフレッシュできる。
もともとその2年前から、私の温泉好きをよく知る友人、女優・歌手の大西結花さんから勧められた温泉ソムリエ資格取得を機に、毎日新聞系列のウェブ媒体で温泉コラムを連載していたが、本格的に温泉の仕事をしてみようと決意した。
「美肌の湯」という言葉をよく聞くが、どういう美肌効果が期待できるのかまではほとんど知られていない。余分な皮脂や角質を取り除く、保湿力があるなど、実は泉質によって全然違う。それらを、メディアを通じてわかりやすく伝えていくことが今の私の仕事だ。また、自治体の観光PRの監修や、「温泉総選挙」という5省庁後援の温泉地活性化プロジェクトに関わるなど、温泉を軸とした地域活性化にも取り組んでいる。
欧米の多くの国では温泉の研究が進み、医学的効果も実証され、湯治が医療行為と認められている。日本にも国民保養温泉地計画や医療費控除などあるが、まだまだ遅れている。1日も早く、欧米と肩を並べられるようにしたい。そして若手のサポートにも力を入れていきたい。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。
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朝香(あさか)
美肌温泉家
コラムニスト・2009文