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【塾員クロスロード】
大藤豪一郎:日本語オペラを作る

2023/05/17

  • 大藤 豪一郎(おおとう ごういちろう)

    森の五重奏団クラリネット奏者
    テオリアプロジェクト代表・2000環

2020年春、コロナがきたので20年ぶりにやりたいことリストを更新した。

在学中所属していたアインクライネスオーケストラの定期演奏会でモーツァルトのピアノ協奏曲22番を演奏し、音楽の道に進もうと決意。共に演奏した同級生の片爪大輔は現在読売日本交響楽団フルート奏者。記憶にないが、我々はきっと素晴らしい演奏をした、はず。当時、東京オペラシアターという市民オペラでは指揮をしていて、物語と音楽を扱うオペラに進むか迷ったが、奏者の道を選び洗足学園音楽大学に進学した。

それから20年後のコロナ。妻を仕事場まで送迎し、2歳になろうとしていた息子と近くの神社で遊ぶ2カ月がはじまる。演奏仕事の忙しさから解放された自分はやりたいことリストを作るしかなかった。そしてやはり物語と音楽がやりたかった。

保育園再開の6月、N響団友オケで長年ご一緒しているジブリの歌姫、井上あずみさんを森の五重奏団(木管五重奏)のゲストとして招き、音楽朗読物語「てぶくろを買いに」を制作、「さんぽ」や「君をのせて」はリモート収録で共演。旦那さんでマネージャーでもある今尾公祐さん(有限会社ドレミ・塾員)に相談にのってもらった。その後も原きよさんの朗読で「やまなし」「去年の木」「走れメロス」を制作。

映像では中学からの師匠である環境情報学部の長谷部葉子先生がみせてくれた短編アニメーション「つみきのいえ」(株式会社ロボット)に加え、ディズニー映画「魔法使いの弟子」も森の五重奏団の文化庁学校公演プログラムに加えた。

現在、2024年3月17日の公演に向けて新作日本語オペラの台本を練っている。2020年10月、ずっと心に残っていた木村哲郎作曲の合唱劇「木馬がのった白い船」の再演をきっかけに森のテオリアとテオリアプロジェクトが発足。イタリアオペラやミュージカルも好きだが、自分たちの母語である日本語と音楽がより密接に紡ぎだす物語を舞台化したい。作曲家の木村哲郎と歌い手の中馬美和を中心に、神谷真士(俳優、声楽家、演出家・塾員)などの「うた役者」が加わり、2022年12月「うた物語『ごんぎつね』」を新作初演。日本語の語りやイントネーションから生まれる、日本語からしか生まれない音楽や劇空間の創造を目指している。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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