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【塾員クロスロード】
藤田崇寛:実況で日本を強くする

2023/03/28

  • 藤田 崇寛(ふじた たかひろ)

    フリーアナウンサー・2016政

日本中が熱狂したカタールW杯から3カ月。大舞台で躍動した日本戦士たちはW杯直後から世界で変わらぬ活躍を見せています。ブライトンの三笘薫(みとまかおる)選手、レアル・ソシエダの久保建英(くぼたけふさ)選手など、多くの日本人が結果を出しています。既に2026年のW杯が楽しみでなりません。

私は大学卒業後、地元・香川県の放送局で5年間アナウンサーとして働き、2年前にフリーアナウンサーに転身しました。現在は東京でUEFAチャンピオンズリーグやプレミアリーグなどの海外サッカーやJリーグの実況を中心に活動しています。

アナウンサーを志したのは中学2年生。大のテレビ好きで、喋ることが好きという単純な理由からでしたが、サッカー実況に携わりたいという思いは当初からありました。きっかけは2002年日韓W杯。小学校4年生だった私は、各国選手が自国の威信をかけて戦う姿に心打たれ、日本国内が熱狂するのを体感しました。以降、試合を観る時もサッカーゲームをする時も、気づけば実況の真似事をしていました。そんな真似事が今では仕事になっていると考えると、人生とは不思議なものです。

さて、実況の仕事といえば、プレーを描写し、得点シーンでは大声で盛り上げるというイメージが強いですが、それだけではありません。私は、実況は〝ガイド役〟だと考えています。美術館で音声ガイドを聞きながら鑑賞すれば作品への理解が深まるように、実況を聞きながら試合を観るとぐっと面白さが増す。そんな実況が私の理想です。そのためには両チームの最近の試合を観ることはもちろん、戦術、選手の特徴・経歴、クラブの成り立ち、その国や街の歴史・文化なども頭に入れておく必要があります。そういった事前準備を重ね、中継に臨んでいます。

私にはこの仕事を通して叶えたい夢があります。それは「実況で日本サッカーを強くする」ということです。自分の実況を通して、より多くの人がサッカーに興味を持ち、目の肥えたファンが増える。中継を観た子供たちがサッカー選手に憧れ、高みを目指してプレーする。そうやって素晴らしい選手が増え、日本代表が強くなる。遠回しかもしれませんが、そんな貢献ができればと日々仕事に励んでいます。

いつの日か我ら日本代表が黄金に輝くW杯トロフィーを掲げることを夢見て、今日も私は喋り続けます。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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