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【塾員クロスロード】
牧信吾:デジタル・パワー

2022/07/16

  • 牧 信吾(まき しんご)

    NIPPON EXPRESS ホールディングス株式会社経営戦略本部DX推進部・2005商

私はロジスティクスの分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の戦略を企画・推進する仕事をしています。ロジスティクスはトラック、航空、海運、倉庫、物流サポート、バックオフィスなど業務範囲が広く、AI、IoT、VR、ドローンなど様々な先端技術を活用するチャンスがあります。様々な選択肢がある中で、どのようにすれば最大限の効果を生み出すことができるのか、常に自分の考えを持って取り組むようにしています。

趣味の話で恐縮ですが、私の考えの軸となるような経験の話をしたいと思います。私は大学の頃からロードバイク(競技用自転車)に乗り、様々なレースに出場していました。はじめは、ただがむしゃらに長い距離を乗ったり、心拍数を上げたりしてトレーニングをしていましたが、それがどのような効果をもたらすのかよく分からず、成績もなかなか上がりませんでした。そこで、自転車にパワーメーターと呼ばれる先端技術の機器をとりつけてみたところ、その状況を打破することができたのです。

パワーメーターには高度な技術が使われており、金属の歪みからペダルを踏む力を数値化することができます。最大限の力で一時間、ペダルを踏み続けられる力をFTPというのですが、これを見ることによって、自分がトップ選手とどの程度の力の差があるのかが分かります。またこの機器を使うことにより、ペダルを踏む力のベクトルを分析したり、自分のコンディションを把握したり、バーチャル空間でトレーニングしたりすることも可能です。自分がどの位の力を増やせば目標を達成できるのかが分かり、トレーニング自体の質も上がることによって、自分の能力を大幅に向上させることができました。

先端技術には大きな力があり、使い方を間違うと悪い影響が出ることもあります。そうしたことに充分に気をつける必要がありますが、その文脈でものごとを考えると行動につながらずに停滞してしまうこともあると思います。先端技術を活用することで、これまでできなかったことができるようになるでしょう。様々なことを可視化したり、データ分析したりすることによって、新たな気づきやビジネスチャンスにつなげることができるかもしれません。明るい面に目を向けて仕事に取り組んでいきたいと思います。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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