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【塾員クロスロード】
浅賀桃子:カウンセリング文化定着への道

2022/05/23

  • 浅賀 桃子(あさか ももこ)

    ベリテワークス株式会社代表取締役、アジア太平洋キャリア開発協会理事・塾員

大学卒業後、縁あって飛び込んだIT業界。起業前に人事担当として勤務していた企業ではメンタル不調になる方を多く見てきました。不調の兆候があっても早期対処ができず、長期休職や退職に追い込まれることもしばしば。IT業界に身を置き続ける中でカウンセリングの必要性を強く感じ、カウンセラーの資格を取得しました。

取得後は資格を活かし自社社員のキャリア相談を多く受けていましたが、次第に企業の中の人間ではなく独立した第3者として各企業の社員の方と向き合いたいと思うようになりました。会社の人事担当・カウンセラーとしての立場では、相談する際に自身の評価のことなどを考え本音を言い出せなかったり、心理的に遠慮してしまったりする人もいると感じたからです。そして「IT技術者がメンタルヘルスを保ちつつ、元気に働き続けられるような世の中にしたい」という願いを込めて、2014年にITシステム開発・カウンセリング事業を行うベリテワークス株式会社を設立しました。

私は現在理事を務めるアジア太平洋キャリア開発協会の年次大会などを通じて海外のカウンセラーとの接点も持っていますが、やはり日本では諸外国に比べカウンセリング文化が浸透していないと感じています。第3者への相談自体が「弱い人間のすること」という社会風潮に気づき「普段からカウンセリングを受けることが当たり前の世の中にする」という目標のもと活動を続けています。特筆すべきこととしては、カウンセリングの敷居を下げたい思いから、幼少期からの大ファンで20年以上独自に研究を続けているアメリカの漫画『PEANUTS』に登場する「スヌーピー」をはじめとするキャラクターのエピソードを使う取り組みがあり、NHK「おはよう日本」で紹介していただいたことがあります。

昨年1月には、会社設立時からの社内外での実践をまとめた著書『IT技術者が病まない会社をつくる──メンタルヘルス管理マニュアル』を出版しました。図書館情報学専攻で学んでいた当時から持っていた出版の夢が叶い嬉しかったです。まだまだ道半ばではありますが「カウンセリングは定期的に受けるもの」「定期的に受けているからこそ生産性高く仕事ができる」そのような文化が日本に根付くように微力ながら邁進し続けたいと思っています。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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