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【塾員クロスロード】
しばはし聡子:離婚してもふたりで子育て

2022/02/23

  • しばはし 聡子(しばはし さとこ)

    一般社団法人りむすび代表共同養育コンサルタント・1996法

突然ですが、子どもがいる夫婦が離婚した後、離れて暮らす親子が会えている割合はどの位だと思われますか。正解は3割。7割の親子は交流がなくなっているのが現状です。

私自身、7年前に離婚し、高校生の息子と暮らしています。離婚当初は元夫と関わりたくないが故に父子交流に後ろ向きでした。その後、私の顔色を窺い父親の話をしない息子の様子を見て改心し、前向きになると、父母子三者の関係が瞬く間に良好に。この経験をきっかけに、別れても両親が子育てに関わる❝共同養育❞に向けたサポートや普及活動を行う「一般社団法人りむすび」を立ち上げ、現在5年目になります。

離婚をするほどの夫婦ですから、離婚後の子育てについて話し合うことは容易ではありません。重要なのは「別れても親子、親同士の関係は続くから離婚の際に争わないこと」。子どもは親の離婚でただでさえ傷ついています。さらに父母が争ったり片親と会えなくなることのないようにするのは親次第なのです。

夫婦それぞれ見えている景色は違います。よくあるのが「夫が高圧的で私の意向を聞いてくれない」と思う妻に対し、「こんなに家事も育児も手伝っているのに何が不満なんだ」という夫。コミュニケーション不足から生じるボタンの掛け違いです。

ここでのポイントは「相手を変えようとするのではなく自分自身に何ができるか考えること」「察してもらうことを期待するのではなく言葉で伝えること」。現状は全て相手だけに問題があるのでしょうか。再度自分から先に歩み寄るのも1つです。

それでも夫婦関係の継続が難しい際には、共同養育に向けて夫婦から親同士の関係に移行していくために夫婦の感情と親子関係を切り分けること。りむすびでは夫婦間の気持ちの交通整理をしつつ夫婦継続または共同養育に向けて伴走しています。

今後は、「離婚するとひとり親」ではなく「離婚してもふたり親」に世の中の固定観念を変えるべく、さらに普及活動を強化していきたいです。また、司法や行政向けの研修、大学など次世代層に向けた講義、企業の福利厚生の一環として家族問題のメンタルケアなどでもお役に立てればと考えています。

離婚しないに越したことはありませんが、やむを得ない時には❝共同養育❞という方法があることを心に留めていただけますと幸いです。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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