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【塾員クロスロード】
小島靖久:称号を持つ人に勝手になる

2021/11/12

  • 小島 靖久(こじま やすひさ)

    上野アメ横小島屋3代目店主・1998政

「あなたの仕事はどんな事をしているの?」この質問に答えるのはとても難しい。

私は、上野・アメ横の実店舗とインターネット通販を行う、ドライフルーツとナッツの専門店、小島屋の店長をしている。

ネット通販の仕事はまだまだ一般的ではないため、「1日の仕事ってどんな事してるの?」と聞かれる事が多いが、この説明が難しい。

受注や問い合わせは(専門的なことは担当するが)、基本的には中国の外注業者やスタッフにお願いしている。出荷については静岡の外注倉庫で行っており、ホームページの作成もプロに行ってもらっている。新商品を開発することもあるが、それがメインではない。

最近の企業の名刺には、仕事が多くすごそうに見えるからか、「フロンティア事業部メディアプロジェクト推進室テクニカルプロダクトマネージメントシニアマネージャー兼……(続く)」のように、説明しているようで説明できていないのも多い。宅配便の伝票に入力しきれなくて困るだけだ。

そうした事態をさけるべく、2016年まで、私の肩書は「常務取締役兼ネット通販部部長」だったが、当時「仕事何してるの?」と聞かれるとやはり困った。そこで自分の仕事について考えた時、ようやく気が付いた。私の仕事の説明は「私がどのような存在になりたいか? どのような影響を世界に与えたいのか?」でいいのではないかと。

そこで自分の名刺を「小島屋 専務取締役/ドライフルーツとナッツの上位探究者」と肩書をシンプルにし、称号を付ける事にした。

お客さんへの問い合わせをする時もある。伝票を発行している時も、集客の施策を考える時もある。

ただ、私の仕事は「世界中のドライフルーツとナッツをより深く知り、それを広めていく事」。

称号をつけて以降、相手からの質問もドライフルーツとナッツに話が集まるようになった。当然それにこたえられる自分になるためには勉強も必要になる。その結果として「マツコの知らない世界」の「ドライフルーツの世界」に出演。その後多くのメディアに呼んで頂いている。

「あなたはどんな事している?」

これに答えるには自らの称号を自ら決める必要があり、それが自らの未来を作っていくと私は考える。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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