三田評論ONLINE

【塾員クロスロード】
黄 仙惠:国際文化交流の架け橋を

2021/05/24

  • 黄 仙惠(ファン ソンヘ)

    前韓国コンテンツ振興院日本ビジネスセンターセンター長・2019KMD博

日本に滞在して今年で19年目になる。来日前までは、韓国のテレビ局でドキュメンタリーや情報番組を作っていたが、もう一度人生のチャレンジとして日本への留学を決めた。留学生活を始めた2002年は、FIFA W杯が日韓共同で開催され、スポーツによる両国の文化交流をしみじみと実感できた。この影響が大きかったのだろう、将来は何かを通じて日韓の国際交流のような仕事ができたらと望んでいた。

その次に選んだのが、コンテンツプロデューサーである。主に韓国のドラマ、バラエティー、映画などの権利を確保し、パッケージを製造・販売したり、オリジナル番組を作ってチャンネル編成したり、コンテンツ流通ビジネスに携わっていった。今考えれば、サッカーがドラマ・映画に、国際交流が国際流通という形に変えて夢を叶えたと言える。

一方、15年間働きながら日本と韓国、両国の優れている〝コト〟を合わせれば、きっと世界に通じる〝モノ〟ができると確信していた。そのために、次のステップとして選んだのが、韓国コンテンツ振興院日本ビジネスセンターである。韓国コンテンツ振興院は、韓国の文化コンテンツ産業政策を実行する国家行政機関で、海外拠点は、韓国コンテンツの海外展開を促進させるため、現地の情報収集とネットワーキング拡大を目指し、様々な施策を行っている。

2018年からセンター長としてあらゆるジャンルで日韓の協業を実現することを心掛けた。あるアニメーション作品は、ストーリーと主題歌は韓国、画像は日本、配信はグローバルプラットフォーム。協業だからこそできる真の産業交流だと思う。W杯をきっかけに日本では〝韓流〟というムーブメントが起き、今は第4次韓流と言われるほど、韓国の文化が深く染み込まれている。しかし、一方的な韓国のコンテンツの良さを伝えることではなく、相互協業を通じたビジネス展開が両国の発展的な文化産業交流だと信じている。

最近、韓国ドラマ、K-POP、映画、さらに食べ物、ファッションまで、再び関心が高い。政治や歴史問題と関係なく両国の文化そのものが好きと堂々と言う若者たちが多いのが嬉しい。そんな若者たちが多文化共生と国際文化交流の大事さを社会で実践できるよう、これからはグローバル人材育成を目標にし、日本と韓国の架け橋として活動を続けていく。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

  • 1
カテゴリ
三田評論のコーナー

本誌を購入する

関連コンテンツ

最新記事