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【塾員クロスロード】
森山 明能:人生にオーナーシップを

2021/03/12

  • 森山 明能(もりやま あきよし)

    七尾自動車学校代表取締役社長・2007総

家業の七尾自動車学校の代表を父から引き継いで3年目である。その少し前から経営者である私と全社員が1対1で対話する時間を設けている。その際によく社員に伝える言葉がある。「どういう暮らしがしたいか? どういう生き方をしたいか? を自分自身で考えてほしい」、そして「それを実現する媒体として会社を活用してほしい」というものだ。

これは父の時代からの当社の働き方に対する哲学で、個の幸せに対する価値観をベースにすることで、仕事へのモチベーションを上げて当事者意識のある社員になってほしいという願いを込めている。また、会社はその環境整備に徹するという意思も示しており、例えば、全国でも珍しい教習指導員の兼業を制度化していたり、定年後の再就職を希望すれば何歳でも働けたり、さらには業務にまったく関係のない資格取得をも推奨したりしている。できる限り社員の多様な働き方、そして生き方をサポートしたいと考えているのだ。

少し前に、キャリアオーナーシップという言葉に出会った。その意味は「自らのキャリアについてどうしたいか、どうなりたいかなどを主体的に考える必要性」ということだそうで、人生100年時代においては1人ひとりのそれが問われているという。その通りだと思う一方で、本当にキャリアのオーナーシップだけでいいのか? と思う節がある。キャリアの意味を拡大解釈するか、人生という言葉に置き換えたほうが当社の働き方の哲学に近い気がするからだ。つまり、私が社員に面談で伝えようとしていることは「人生にオーナーシップを」ということになろうか。

この言葉を社員に求めるだけではなく、自らもその実践者でありたいと思う。仕事の面では本業の他、民間まちづくり会社・御祓川(みそぎがわ)でシニアコーディネーターを、全国の仲間とローカルキャリアを探求・推進する(一社)地域・人材共創機構では代表理事を務めている。所謂パラレルキャリアだ。プライベートでは「能登を明るく」という自らの命名理由を体現すべく、愛する地元を盛り上げるイベントなどを主催してきた。もはや仕事とプライベートの垣根がない人生を送っているが、その様子は社員のみならず幼い2人の子どもたちも見ているだろう。彼らがその背中を見て、人生のオーナーシップを大切にしていってくれることを切に願う。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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