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【塾員クロスロード】
高橋 典子:おからの力を活かしたい

2021/01/15

  • 高橋 典子(たかはし のりこ)

    料理研究家、NIPPON おからプロジェクト代表・1985

小さい頃から「ものを美味しそうに食べる子だ」と褒められて育ってきました。大学卒業後、銀行勤務、海外生活を経て、2003年から自宅で料理教室を主宰しながら、ライフワークとして取り組んでいるのが「おから」を食材として広める活動です。

20年以上前、近所の豆腐店で見たおからが、新雪のように純白でサラサラとあまりにも美しいのに、産業廃棄物扱いにされている現状が許せない気持ちとなり、おからを使って料理やお菓子を作りたいと思ったことが私の活動の原点です。

幸運にもおからレシピの本を2冊出版させていただき、活動範囲を広げるべく「NIPPON おからプロジェクト」を立ち上げました。大手企業や社会福祉法人での商品開発における助言やレシピ提供、大学の研究室と共同でのおからの研究をしたり、テレビ・ラジオ・雑誌などメディア出演、地方自治体やレストランとのイベントの開催などに取り組んできました。ありがたいことに塾の諸先輩、後輩のお力添えを多くの場面でいただき、10年前にはあまり話題にもならなかったおからでしたが、数年前に「おからパウダー」が販売されるようになった頃から、問合せを多くいただくようになりました。

おからというと、搾りかすで、栄養など何もないと思われがちですが、実はタンパク質含有量は豆腐より多く、食物繊維に至っては、全ての食品中ベスト3に入る含有量の多さ。最近話題の「腸活」にも適した食材です。料理においても和食だけでなく、イタリアン、エスニック、フレンチなど何にでも馴染み、経済的で環境面でも貢献でき、高タンパク低糖質で素晴らしいものなのです。

昨年は一般社団法人JLMMのご依頼で、カンボジアの貧しい地域で大量廃棄されているおからを使っての健康食作りの指導を現地でさせていただきました。簡単にできるおからのケーキが喜ばれ、翌日から学校の毎日のおやつで出されるようになり、大変嬉しく思いました。今後、国内外での食料不足問題解決の一方法としておからの活用の取り組みを考えています。

どんな時代でも何より大切なのは、楽しく美味しく食べること。そのために、おからで美味しく健康に! をモットーに、もう少し走り続けたいと思います。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。

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